「聖地巡礼」宗教的な意味はなく、主にアニメ作品の舞台やモデルになった場所=「聖地」をファンが訪れることを指します。

 

時代劇の舞台は主に江戸。

その景色は、しかし、今の東京にはほとんど残っていません。

 

時代劇を観ながら、私たちが「江戸」としてなじんできた景色の大半は現在の京都にありました。

 

下鴨神社

広大な原生林に囲まれ、下界から隔絶されたような空間にあるこの場所には、大正末期から1960年代にかけて松竹の下鴨撮影場があり、撤退後も、数多くの時代劇が撮られています。

 

代表的な使われ方としては『鬼平犯科帳』のオープニング。映画『浪人街』ではさらわれた女郎(樋口可南子)を救うために駆けつけた浪人たち(原田芳雄、勝新太郎、田中邦衛、石橋蓮司)による壮絶な殺陣が演じられているのもこの場所なのだそうです。

 

ほかにも映画『必殺!Ⅳ 恨みはらします』(1987年、深作欣二)、『忠臣蔵』(2005年、フジテレビ)、『剣客商売スペシャル 決闘・高田馬場』(2005年、フジテレビ)などで決闘シーンが撮られています。

 

 

上賀茂神社

下の写真は、『鬼平犯科帳』第一シリーズ第17話「女掏摸お富」のラストで、平蔵に捕らえられた女スリのお富(坂口良子)がその心情を語るシーンで用いられているそうです。

 
 
 
大覚寺
時代劇のエンドクレジットを観ていると、必ずといっていいほど「協力:国宝 大覚寺」という文字が出てくるといいます。
 
大覚寺は、そのくらい時代劇の撮影に協力的なお寺なんだとか。
 
大覚寺の境内は、石垣造りの掘割が外堀として周囲に張り巡らされています。
この外堀を効果的に使ってきたのが『必殺』シリーズ。
簪の秀(三田村邦彦)など、若手の殺し屋たちがクライマックスの殺しのシーンに出ていくとき、暗闇の中駆けていく掘割がここなんだそうです。
 
また、殺しのシーンそのものがここで撮られることもあり、殺されるのは悪党ばかりでなく、中村敦夫演じる赤井剣之介が果てたのもこの場所だったとか。
そういわれてみると、何やら血の匂いがするような。
 

 

 

彦根城

日本有数の城として知られる彦根城が、時代劇で「江戸城」として頻出するのは、なんとなく知っていました。

 

使い勝手がよく、いろんな城として用いられているようですが、『忠臣蔵』ものでは赤穂城、『信長のシェフ』(2013年、テレビ朝日)では岐阜城、『白虎隊』(1986年、日本テレビ)では会津鶴ヶ城、『武士の一分』(2006年、山田洋次)では、主人公(木村拓哉)の登城・下城時に使われているそうです。

 

いずれも有名な観光名所ですが、時代劇というフィルターを通してみると、またおもしろいものがあります。

 

現地に足を運びたくなりました。

 

お読みいただきありがとうございます。

 

 

 

 

 

2021年4月26日

ミシマ社

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