漫画家で詩人のやまだ紫さんの詩集です。

 

 

 

夢を見ていたよ

幸せな夢だったよ

 

わたしはなんだか嬉しくって

目がさめても目をあけなかった

 

顔なんかもう笑ってしまって

もう 直らなかったよ

 

 

 

白日

 

仕事をしない三日目

地下鉄ホームの石のタイルを足でたぐりながら

(ずっと仕事が絶えませんように……)

と胸の中で幾度か言った

 

 

思春期

 

家の中には人が居て

どこの部屋にも顔があり

 

娘は一人でお風呂場で

湯気に隠れて泣きました

 

 

気になる男性のことを書いた「男友達」、夕食の支度をしながら口ずさんだ歌に思わず涙する「荒城の月」、耳が聴こえない猫との日常を描く「シンデレラ」など、大人の女性の優しい詩です。

 

 

やまだ紫

1969年、『COM』5月号でデビュー。つげ義春(漫画家)から高い評価を得て、杉浦日向子、近藤ようことともに「ガロ三人娘」と呼ばれる。

2002年、急性膵炎を患い、その後遺症から様々な病気に悩まされるようになり、2009年5月5日脳出血のため死去。

 

あとがきは夫で元ガロ副編集長の白鳥千夏雄さん。

つげ義春さんや佐野洋子さんの書評も載ってました。

 

 

 

2010年2月28日

思潮社

 

お読みいただきありがとうございます。