bluegreenbooksさんのご紹介で読みました。

「モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語」内田洋子

 

 

アルベルトの本屋さんはヴェネツィアにあります。

扱っているのは古本ばかりなのに、頻繁に手入れされていて、店内はいつも瑞々しい雰囲気に包まれているといいます。

 

 

 

殺人事件が起きれば刑務所や現場にまつわる本を並べ、調べものがあればピッタリの本を勧めてくれます。

 

水先案内人であり知恵袋のような書店。

 

ルーツは北イタリアの山脈にあるモンテレッジォという小さな村にありました。

 

 

 

山岳地帯にある村では、男たちは近隣の村々へ農作業の手伝いに行き、暮らしを立てていました。

 

景気が悪くなり働き口がなくなると、行商を始めます。

本を売りにいったのです。

 

なぜ本を。

どこから仕入れて、どこに売りに行ったのか。

 

そのあたりには大変興味深い歴史があり、ぜひ本書を読んでいただきたいのですが、1800年代後半から1900年代前半にかけて、露天で果物やチーズと一緒に並んだ『ピノッキオ』や『白雪姫』など、子供向けの本がよく売れたのだそうです。

 

親から子へと本を運ぶうちに引き継がれた本を見抜く眼力は、出版社にも見込まれ、新刊の企画の参考にされるようにもなります。

 

残念ながら、すべての本を仕入れることはできません。本屋は、売る本を選ばなければならない。選んでいると、しみじみ幸福な気持ちになります。そして、選んだからには真剣に売ろうと、背筋が伸びます。

 

政治や思想、バチカンから発禁処分にされた書籍など、危険な書物を運んだ「文化の密売人」として、「イタリアの歴史を底から変えた」とも言われています。

 

意見を他人に押し付けないが、新しい情報には常に聞き耳を立てている。問われるまで、黙っている。分を弁えている。信念を揺るがすことはないが、機敏に行動する。自分だけが頼りだ。いつも飄々としている。

 

作者の内田洋子さんが、たくさんの文献に当たって調べた歴史と、何度も村に足を運び、人々から聞いた話とで織りなされ、あざやかによみがえった村の記憶です。

 

美しい写真と相まって、一緒に旅をしているようです。

 

その人らしさが一番映える洋服を見立てるのが洋品店の役目なら、読んで心が豊かになる本を勧めるのが書店ですものね

 

 

 
 

また、すばらしい本に出会えました。

bluegreenbooksさん、ご紹介ありがとうございます。

 

みなさん、お読みいただきありがとうございました。

では、また。