日本初の発掘調査をしたのは、水戸黄門(徳川光圀)。
1692年(元禄5年)、栃木県の侍塚古墳を発掘し、神獣鏡や武具を多く出土しました。
 
光圀は絵師に出土品の絵を描かせ、古墳を修復し、土の流出を防ぐために松を植えたそうです。
現代にも通じる、「記録・修復・保存」です。
 
 
本書の筆者は、ハローワークに出ていた求人で遺跡発掘調査事務所に雇われ、整理作業から、発掘現場に出るようになり、体験を『遺跡発掘ガール』『遺跡整理ピープル』などの冊子にまとめて、同人誌イベントで販売。
神奈川県秦野市の地域活性化コミュニティが発行するフリーマガジンの編集長でもあります。
 
マンガで、発掘現場や作業を紹介してくれます。
 
 
 
ワクワクするのが(私だけかも)、時代ごとの遺物をイラストでまとめたページです。
歴史の教科書は古い時代から学びますが、発掘は新しい時代から掘っていきます。
上の層のほうが新しいので、言われてみればあたりまですが、気がつかない点でした。
 
 
 
 
その遺跡を掘ることができるのは1回限り。
掘ることは破壊でもあるので、遺跡の一番いい保存方法は『掘らないこと』。
なので、整理と記録は丁寧に行われます。
 
 
 
遺跡発掘調査の仕事をはじめて10年という筆者。
扱う遺跡はその都度、時代も地域も異なるので、慣れるというより、日々の業務を必死でこなす毎日といいますが、とても楽しそうです。
 
遺跡発掘という肉体労働をするうちに元気になり、手相まで変わったというからおどろきです。
強運の持ち主と言われるマスカケ線になったとか。

 

正直に言うと、いち作業員の私の体験が、こうして本になって皆様の目に触れるなんて「大それたことだな」と震えてしまいます。

 

それでも、あえて言うなら、過去の人々の生活に触れるという体験は誰もがすべきで、専門家や研究者の人たちだけものもではない。

『多様化』の叫ばれる昨今ですが、その根本で大切にされるべきは、自分とは違うバックグラウンドを持った人々や文化に対する尊重だと思います。

 

そして過去に生きた人々に対しても、同じように尊敬の念を抱き忘れなければ、人類のこれからの行先は明るいものになると思うのです・・・。

(あとがき)

 

 

2021年9月20日

創元社

定価1540円(本体1400円)