文化によって、
食べるものや着ている服が違うように、
ことわざだって違うのです。

 

ザワークラウトの中で自転車をこぐ。

フランス語

 

ブタの背中にのっている。

アイルランド語

 

目から遠ざかれば、心からも。

ヘブライ語

 

その国の言葉を知らなければわからないような

世界のことわざが全部で51個紹介されています。

 

日本からは、

サルも木から落ちる。

誰でも知ってるでしょうと思いますけど、外国の人は知らないんですね。

 

 

あなたは、私のオレンジの片割れ。

Tú eres mi media naranja.

スペインのことわざです。

誰かを自分の「オレンジの片割れ」とよぶのは、その人が自分の魂のパートナーで、生涯愛する人であることを意味するそうです。

由来は、同じオレンジはひとつとしてないので、半分にしたオレンジにぴったり合わさるのは、その片割れだけだという説。

もう一つは、ギリシャ文学までさかのぼるというもの。

 

米津玄帥さんの「Lemon」に出てくる「切り分けた果実の片方のように、今でもあなたはわたしの光」はここからきてるのかな。

 

小さなアヒルを吹き出す。

ラトビア語

 

 

さて、羊に戻るとしようか。

フランス語

おしゃべりの最中、自分の話題が脱線したことに気づいて、本題に戻ろうとするとき使われる言葉だそうです。

 

 

あごひげが郵便受けにはさまってしまう。

ノルウェー語

この言葉は、多くの場合、現行犯で逮捕されるという意味で使われます。

悪いことをしてないのに、望ましくない状況にとらわれた、完全に困った、計画がだめになった人を指して使われることもあるようです。

 

ちょっと切ないのは

海の水は、ただながめるためだけのもの。

スワヒリ語

海の水とは裕福な人たちの富にたとえられ、それは貧しい人にとって、ただ眺めるためだけものという意味があるようです。

 

 

一輪の花だけが春をつくるのではない。

アルーマニア語

もともとアリストテレスの言葉から生まれた言葉で、たとえ重要そうに見えても、ひとつの現象だけでは全体を判断できないという意味だそうです。

 

 

ほかにも「あなたのレバーをいただきます」とか、「ペリカンを半分に吹き飛ばしている」とか、解説を読まないとわからない言葉がたくさんあります。

 

日本からはもうひとつ

猫をかぶる。

「日本人は、猫となるとちょっと夢中になってしまうようです」とあって、「猫」に関係することわざが幾つか紹介されています。

「猫が茶を吹く」「猫がくるみを回す」「猫に傘」「猫も杓子も」・・・

そういわれるとたくさんありますね。

 

 

作者は『翻訳できない世界のことば』のエラ・フランシス・サンダースさん。

この本は、皮肉なことにたくさんの言語で「翻訳され」ています。

 

「はじめに」の中に、『ニューヨークの人々』という写真集から引用されている言葉がありました。

 

務めて、自分の言葉にもっと慎重になろう。口にしたときには何の意味もないように思える言葉でも、結果的に力をもってしまうことがある。播くつもりさえなかった言葉の種が、自分を離れて人々の中で育ちはじめることもあるのだ。/ブランドン・スタントン

 

多くのことわざは、何世紀にもわたって育まれ、世代から世代へ、コミュニティからコミュニティへと受け継がれてきた植物のようなものです。

それらは、私たちが自分や自分のまわりにいる人たちのことを理解し、またその人たちと共に生きていくべき出来事や、一人で乗り越えていかなければならない出来事の理解を助けてくれました。

 

2016年10月1日第1刷

創元社

定価(本体1600円+税)