みなさ~ん、恋バナですよ~
2015年7月から「東洋経済オンライン」でゆるりと連載されている「日本人が知らない古典の読み方」の一部を加筆修正したものです。
筆者は1980年、イタリア生まれのイザベラさん。
『古今和歌集』『蜻蛉日記』『伊勢物語』などを楽しく解説してくれます。
『和泉式部日記』の筆者を和泉ちゃん、小野小町をバリキャリ・ミステリアス女王と呼びます。
和泉ちゃんたら、夫がいながら、冷泉院の第三皇子である為貴(ためたか)親王という恋人をつくっちゃう。
この男、皇子ということは天皇の息子ですよね。
とんだチャラ男だったというのです。
平安京に疫病が流行り、道路に死体が転がっているという状況で夜遊びを続けて、26歳という若さで帰らぬ人となってしまいます。
平安時代にも疫病がまん延したんですね。
大好きな人を失い、正体もなく泣き伏せる日々。
ところが、もう立ち直れないと思ったそのとき、突然情熱の嵐が再びやってくる。恋しちゃう、だって女の子だもん。
なんと、次の恋人は帥宮敦道(そちのみやあつみち)親王・・・死んだ恋人の弟なんですって!
『更科日記』の菅原孝標女は、ヲタク気質の妄想乙女と評されています。
千葉の田舎で、『源氏物語』をパラパラ読んで妄想していたところなんて、本当にそんな感じです。
『更科日記』から得られる教訓として、「本を読みすぎる女は全然モテない」ということなんだって。
ガーン‼
清少納言はカリスマ姐さん
紫式部は給湯室ガールトークの元祖
『竹取物語』のかぐや姫が、ああも求婚してくる男たちを冷たくあしらうのは、作者の藤原政権に対する痛烈な批判があったのだとか。
それを裏ストーリーとして読む楽しみもさることながら、シャイな日本男子こそ、この物語を読んで、ミカドたちの熱烈アプローチを参考にしてほしいそうです。(いや、怖いわ)
古代エジプト人は砂をあらわす50の単語を持っており、イヌイットは雪をあらわす100の単語を持っていたといいます。
語彙の豊かさは、その文化の価値観のバロメーターとも言われます。
古典作品に出てくる日本語に限定して考えると、男女関係にまつわる単語が驚くほど多いのだそうです。
「垣間見る」「夜這い」「呼ばふ」「遭ふ」「語らふ」「契る」「髪を乱す」・・・
平安時代は、みんな必死で恋をしてたというわけですね。
筆者はヴェネツィア大学で日本語を学び、2005年に来日。
恐らくこの本は日本語で書いているのだと思います。
古典文学に親しむというのは容易いことではない。言葉も文法も違うし、下敷きになっている文化も生活習慣も異なり、文脈がわからないと本来の意味には到底辿り着けない。外国人である私にとって、そのハードルはさらに高い。それでも読みたい。だって、面白いんだもん。
イタリア人は、日本人が箸の持ち方を教わるのかように、子どものころからオシャレのイロハを学ぶのだそうです。
その彼女が、平安のファッションリーダーと崇めるのは、我らが清少納言でした。
筆者おすすめの古典入門ブックリスト
古典文学読本 (中公文庫)三島由紀夫
心づくしの日本語: 和歌でよむ古代の思想 (ちくま新書)ツベタナ・クリステワ
源氏物語私見(新潮文庫)円地文子
2020年7月9日 初版発行
淡交社
定価:本体1600円+税