『スマホ脳』の著者アンデシュ・ハンセンによる『一流の頭脳』のジュニア版です。

 

『スマホ脳』が発売されて以来、「これからどうしたらいいのでしょうか」「うちの子の脳にいちばんいいことはなんでしょうか」と質問されることが多かったというハンセン先生の回答が本書にあります。

 

〈日本の読者のみなさんへ〉でズバリ言うように、結論は「運動しよう—そうすれば脳は確実に強くなる」です。

 

集中力を上げ、幸せな気分になり、心も落ち着き、賢く、発想力豊かになる。

おまけに記憶力もよくなり、自信をつけるためにしなくてはならないことは、たったひとつ運動だといいます。

 

第1章 もっと幸せな自分になる

第2章 イヤな自分とさよならする

第4章 集中力を上げる

第6章 発想力豊かになる

第10章 記憶力をよくする

 

各章にゴールが設定されていて、そのための処方箋が紹介されます。

第1章 もっと幸せな自分になるだったら

【ゴール】

・今までよりしょちゅう、そして長い時間、幸せな気分でいる

・以前は怖かったことが少し楽しみになる

・逆境に強くなる。難しいことをしなければいけない時や、精神的につらい時にもおちこまないようになる。 

 

【処方箋】

週に3回、最低30分の運動。その間ずっと心臓がドキドキして、なるべく何度も息が上がるように。

●すでにやっていることから始める。バスや電車を使う代わりに歩く。

●水泳や鬼ごっこ、楽しいことなら何でもいい

●プロレベル 「心臓やぶりの坂」を駆け上がる

 

集中力を上げる処方箋

最低20分、できればそれより長く、脈拍が上がる運動を。

集中力は運動後の数時間しか続かないので、朝や午前中に運動するのが良いでしょう。

 

発想力豊かになるには(そして少し賢くなるには)

効果は数時間で消えてしまうので、発想力の必要な問題を解いている最中、もしくはその前に最低20分、できれば30分の運動。

 

運動で記憶力を良くするには

週に最低3回、30分くらいの運動を。

長い期間(1か月以上)定期的に運動するうちに、一日中効果が続くようになります。

 

筋トレも記憶力をアップさせてくれます。特に顔と名前を一致させる「関連づけの記憶」に効果があるそうです。

 

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人間の歴史を24時間に置き換えると

23時40分00秒 農耕の始まり

23時59分40秒 産業革命

23時59分59秒 デジタル化。インターネット、パソコン、スマホの登場

 

現生人類の先祖が登場してから今日までを1日とすると、スマホが登場したのは1日が終わるたった1秒前になります。

進化のスピードはもっとゆるやかなので、私たちの脳はデジタル化にまったく追いついていないんですね。そのことが、多くの人が心身に問題を抱える原因になっていることは、前著『スマホ脳』に詳しく書かれていました。

 

とはいえ、スマホに関しては、本書でも触れられています。

 

私たちがスマホに夢中になってしまうのは、ドーパミンというごほうび物質が放出されるしくみと関係がありました。

ドーパミンがたくさん出るのは、実際に何かを手に入れたときではなく、もうすぐ手に入るかもと思ったとき。

 

それで、着信音や通知音が鳴ると、もうスマホを見ずにはいられなくなります。

「今度こそ、とても大切なメッセージが来たかもしれない」「SNSに運命の投稿があったかもしれない」「かも、かも、かも・・・そしてスマホをタップし続ける」というわけです。

 

これは、ポテトチップスの袋を開けるやなくなるまで食べてしまい、その後、ソファーでごろごろしてしまうのと同じように、私たちの脳のしくみのせいだといいます。

ですから、意志の力ではどうもなりません。

 

この場合もハンセン先生は、運動の効果を指摘しています。

運動をし続けることにより、運動をしようと思っただけでもドーパミンが出るようになり、バランスのいい生活を送るような選択ができるようになるようです。

 

この本は、若い人にも早いうちからこうした知識を持たせたいという希望が高まり、書かれたといいます。スウェーデンでは、希望する学校に無料で配られ、これまでに11万6000人の生徒が受け取っているそうです。

 

「成績を上げたければ運動しろ」はいまや常識でしょう。

ボケ防止にも、「脳トレ」ではなく「筋トレ」です。

 

※運動は自分の体力とふだんの生活に合わせ、少しずつ増やし、嫌になったり、体を痛めたりしないで継続することが大切のようです。

 
 
2021年11月20日発行
新潮社
定価900円(税別)