偽本=中身を偽るブックカバー

本は、きりえ画家高木亮の作った「着せれば別の本に見えてしまう」パロディブックカバーシリーズです。ブックカバーなので、中のページに相当するものはありません。外見が全ての作品です。「実在する本らしくみせかけるため」帯部分にコピー(ツッコミ)や嘘のあらすじ、初版特典などをそれぞれに配し、「読んで楽しめる」作品になっています。

 
 
 
筆の代わりにカッターで物語性のある一枚絵をつくってきたはずが、気がつくとパロディ作品も多く手がけるようになっていたという高木さん。
 
誰もが知る東西の名作の題名をもじり、きりえを配したブックカバー集です。
 
『罪と獏』
『カラマーゾフの正体』
『からしがおか』
『若きテルテルの悩み』
『ニルスの不思議な足袋』
 
題名だけでも吹き出します。
 
『長靴をかいだ猫』
くさそうです。
 
 
 
嘘の【あらすじ】がまたおもしろいのです。
 
『だいだ赤おに』
「こころのやさしい鬼です。一緒に野球をしませんか。球もあります。バットもあります。ずっと河原でまってます」
人間と友達になりたい鬼が書いた立て札の募集を見て、子供達が殺到。あまりの人数にチームを分けリーグ戦をすることに。ピンチヒッターの赤鬼は金棒バットで大活躍。たまらず相手チームは青鬼をピッチャーとしてスカウトし―。
戦前の不穏な空気の中、鬼と人とのほがらかな交流に平和への願いを託して描かれた傑作児童文学。参考資料として戦中の検閲版も併せて収録。

 

全部、嘘なんですが、本編が気になります。

そういう人もいるらしくて、派生した作品もつくられています。

 

 
 
『人間ひっかく』は、猫ちゃんが登場する小品に仕上がっています。
ノリで、書評も書かれていたり、読者アンケートもあったりで楽しめます。

 

初版特典読者プレゼントは物語にちなんだ、もらっても困るもの。

 

『ライ麦畑でつかまって』では「手錠(鍵なし)」、『浦島だろう?』では「玉手箱(開封済み)」などです。

 

『浦島だろう?』は、玉手箱を開け老人になった太郎に、やはり年をとった、かつてカメをいじめていた子どもが話しかけるという心温まるお話になっています。

 

各章末には元ネタの文学作品を紹介。

「僕の偽本が、世界の名作に触れるきっかけ……いや、踏み台になればうれしい」そうです。

 

笑えます。

 
 
 

2021年8月15日第1版第1刷発行

現代書館

定価2,000円+税