10月の読書メーター
ご訪問ありがとうございます。
10月の少し多めな読書記録です。
ブログ記事にできなかったものを中心に残しておきたいと思います。
踊る熊たち:冷戦後の体制転換にもがく人々
東ヨーロッパのロマには長年、熊使いの伝統があったという。熊は調教されうしろ足で立って踊る。2000年代、突如動物保護団体から「虐待」と認定され、熊は解放されるが、野生で生きていくことはできなかった。共産主義体制が崩壊し、自由になったはずの人々も、その恩恵を肌で感じられない。崩壊後の9か国のレポートが興味深い。「世界とヨーロッパはコソボのことを何も知らない」「この国はヨーロッパと同じく普通の国で、ただ少しばかり貧しいだけなんだ」
読了日:10月29日
雷蔵、雷蔵を語る
雷さまは『眠狂四郎』でしか知らなかった。日生劇場のプログラムに寄稿した三島の文章や息子さんの太田光紀さんのまえがき。インタビュー、子ども時代や歌舞伎時代の楽屋での写真など、盛りだくさんの内容。美空ひばりや若尾文子を語る文章も楽しい。享年37歳。やっぱりいい男だ。
読了日:10月27日 著者:市川 雷蔵
男の隠れ家 特別編集 古地図で紐解く! 城下町の秘密
東西日本32城を古地図とともに紹介。大江戸タイムトラベルと称した古地図さんぽが楽しい。
読了日:10月26日
Fielder特別編集 完全寝床マニュアル (サクラBooks)
「手持ちの小道具や身の回りに落ちている現地調達物だけで快適な寝床を構築する。自分の力で安全快適な睡眠を手に入れるという動物的行為は、本能的に楽しく、そのまま日々を生きる自信にもつながるのだ」サバイバルシェルターやタープ設営の基本と応用。カメ五郎さんの葉っぱだらけの寝床が楽しい。チンパンジーの寝床を研究する鹿馬耕一郎氏が「IWATA」と共同開発したベッドは楕円形。樹上のベッドで抜群の寝心地を感じたことから思いついたというユニークな構造だ。
読了日:10月26日
督促OL 修行日記 (文春文庫)
支払いの悪いお客様が倒れたとき、救急車を呼んでも来てくれなかった。運び込まれては医療費を踏み倒す常習犯だったらしい。「信用を失うということは命を失うということに等しい。信用のない人は救急車だって助けてくれない」コミュ力が低く、初対面の人とはまともにしゃべれなかったという筆者が、新卒で信販会社の督促部署に配属され、毎日怒鳴られ、心折れながらも、回収ノウハウを研究。300人のオペレーターに指示を出し、2000億円を回収するまでになる成長物語。爽やかな読後感。
読了日:10月25日 著者:榎本 まみ
痕跡本のすすめ
読了日:10月23日 著者:古沢 和宏
健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて
「発達障害がブームになってしまう社会は、ある面では人に厳しい、人間を阻害しやすい社会だと考えている」と筆者は言う。健康を重視する社会で健康を強いられる息苦しさ。行儀よさが期待される社会で、動物として生まれてくる子どもを育てるしんどさ。若者には「コミュニケーション能力があって」「主体的で」「チャレンジ精神に富む」ことを求められる。清潔で道徳的な秩序により安心して暮らせているのには違いないが、知らず知らずのうちに刷り込まれている価値観を時々考え直す必要があると思った。
読了日:10月22日 著者:熊代亨
13億人のトイレ 下から見た経済大国インド (角川新書)
昔は田舎に行くと母屋にトイレがなかった。それだけでも怖かったのにトイレそのものがないとは。夜間に外で用を足すため、女性がレイプ被害に遭うこともあるという。GDPが世界5位規模にあり、成長を続ける国と言われているインド。進まない下水道の整備やカースト制度、排泄物を穢れとする伝統など、立ちはだかる問題は多岐にわたる。「カネさえあればトイレはできるけど、トイレがあってもカネにはなりません」貧富の差もとても激しい。
読了日:10月21日 著者:佐藤 大介
職業としてのシネマ (集英社新書)
人には「やらないほうがいい」というものの、一度ヒットを出そうものなら、次のヒットを狙って深みにはまっていくという映画配給の仕事。知られざる舞台裏を語るとあるが、監督、俳優についても多くページが割かれている。『ココ・シャネル女を磨く言葉』や『マリリン・モンロー魅せる女の言葉』などの著書がある筆者が、名言を引用する。「私はセクシーに演じることなんてないのよ、初めからセクシーなんだもの」パンデミックの中、映画館で観る意味など、この時期ならではの内容も。
読了日:10月20日 著者:髙野 てるみ
本を売る技術
「いつだって今日入る本が売りたい本だよね」 1980年芳林堂池袋本店・理工担当として書店員をスタート。パルコブックセンター新所沢店、吉祥寺店、渋谷店、リブロ池袋店などで計36年勤務した矢部潤子さんを本の雑誌営業部・杉江由次さんがインタビュー。筆者が工夫してきた、お客さんが手に取って買いたくなるような並べ方を新人に教えるかのように伝授してくれる。「その本の本籍地をどこに定めるかっていうのが売り上げを守るには一番大事なことなんだよね。だから著者プロフィールはしっかり見ます」
読了日:10月19日 著者:矢部 潤子
その落とし物は誰かの形見かもしれない
落とし物を見てなんでそんなこと考えるの?貧困な発想を刺激される。
読了日:10月19日 著者:せきしろ
男の隠れ家 特別編集 一度は読んでほしい 小さな出版社のおもしろい本2019
小さな出版社とその本を紹介。どの本も個性的。巻頭に夏葉社・島田潤一郎氏、書肆侃侃房・田島安江氏、Title・辻山良雄氏らの対談。「本離れ」は深刻に受け取っていないという。まじめに好きな本をつくって売っていれば、大もうけはできなくても、食べるだけなら何とかなるらしい。読了日:10月18日 著者:三栄書房
MOZU 超絶精密ジオラマワーク
MOZUさんが「好き」を極めるのに親のサポートは大きかった。子どもを信頼し、好きなことだけをやらせる。今のお父さんはそういう人も増えてるのかな。「力を奪う言葉ではなく、力を与える言葉をかける」子どもに対してだけではなく、全ての人間関係に言えそうだ。読了日:10月16日 著者:MOZU
Mozuミニチュア作品集 こびとの世界
「こびとの旅館」、「こびとのトイレ」、「こびとの押し入れ」すごい、すごい、すごい。見ているだけで楽しい。読了日:10月16日 著者:Mozu
小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常
静かな、短い文章が57。そのすべてに考えさせられる一文がある。「いま読みたい本を買うのではない」「閖上の夜」が特に印象に残った。紹介の『新版 動的平衡』、『庭とエスキース』を読みたくなった。読了日:10月15日 著者:辻山 良雄
認知症がとまった! ? ボケてたまるか 実体験ルポ
62歳で軽度認知障害と診断された筆者の認知症発症をまぬがれようとする奮闘記。血液サラサラ薬の治験に参加したり、音楽療法、美術療法、予防ゲーム「アタマ倶楽部」など、認知症予防に効果があるといわれることを何でもやってみる。運動習慣のある人でもボケるのはなぜか。「脳と感覚神経が繋がっていればボケません」とは『ボケたくないなら筋トレをやりなさい』の著書がある山本輝幸さんの言葉。真剣にトレーニングすれば胸や背中の筋肉をピクピクさせられるそうだ。挿画は著者の異常に最初に気づいたという安野光雅さん。
読了日:10月13日 著者:山本朋史
頂上を目指さない 富士山さんぽ
このあいだ読んだ、『雲の上に住む人』(山内悠、関次廣)には、登山シーズンの富士山は観光地となるとあった。山小屋でタクシーを呼んでくれという若い女性、コスプレで登って体調を崩す人、雷のときに電気が消えて文句を言う人・・・そんな喧騒から離れて、静かに富士山の周りを歩くのもいい。目的や体力に合わせて選べる幾つかのルートとコラム。原始林と樹海コースは行ってみたい。
読了日:10月13日
「沁みる夜汽車」の物語2
「特急白鳥号」「天竜浜名湖鉄道」「阪堺電車」など、鉄道にまつわる10の物語。「引退なんてもったいない。行けば楽しいんだし。それに歩くのは薬。あまり歩くとヒザが痛いけど、お客さんにはそんなこと言わない。痛い足を引きずってまで行商に来てるなんて思われたくないものね」専用列車がなくなった今も行商に出るおばさんの言葉が沁みる。
読了日:10月12日 著者:NHK沁みる夜汽車制作チーム
丁寧に暮らしている暇はないけれど 時間をかけずに日々を豊かに楽しむ知恵
「おしゃれは、洋服の力でなく、自分の力でするもの」元気な顔で人に出会えるように、スキンケアは時間差で。無印良品敏感肌用高保湿化粧水をつけたら、時間をおいて保湿クリームを。さらに時間をおいてからメイクでより効果的に。
読了日:10月11日 著者:一田 憲子
図書館さんぽ -本のある空間で世界を広げる-
全国の図書館とその周辺のガイドブック。都内の図書館のほかに、旅先で寄りたい105館を紹介。国際教養大学中嶋記念図書館、大崎市立図書館、映画『図書館戦争』のロケ地となった水戸市立西部図書館など。隈研吾氏設計の富山市立図書館はガラス美術館と併設。美しい。
読了日:10月10日 著者:図書館さんぽ研究会
「100分de名著」名作セレクション
『愛するということ』(フロム)『歎異抄』『フランケンシュタイン』など。「100分で名著」で取り上げた名作を32作収録。各書、「解説」「引用」「番組から」「こぼれ話」の6ページにまとめられていて分かりやすい。講師の選び方や番組の構成など、裏話も興味深かった。
読了日:10月07日
陰翳礼讃
写真家の大川裕弘さんは「婦人画報」「美しいキモノ」「和樂」などに載せる写真を撮っている。谷崎の文章にきれいな写真が挿入される。好みの写真ではなく、本は重いが、字は大きくて読みやすかった。 「まあどう云う工合になるか、試しに電灯を消してみることだ」
読了日:10月06日 著者:谷崎 潤一郎
進みながら強くなる――欲望道徳論 (集英社新書)
古本を買い過ぎて借金だらけになってしまった筆者は、どんな仕事も断らないで引き受けてきた。そのため40歳過ぎても成長できたという経験から、進みながら強くなろうという。人を動かす行動原理は「自己保存欲求」「自尊心」「省エネ欲望」だが、面倒から逃れようとすると、さらに面倒が生じるというイタチごっこからは逃れられない。
読了日:10月04日 著者:鹿島茂
命を危険にさらして: 5人の女性戦場ジャーナリストの証言
フランスのテレビ局TFIで働く5人の女性戦場ジャーナリストのエッセイ集。派遣先は、リビア、チュニジア、シリア、中央アフリカなどの紛争地帯。「たえず錯乱のなかで生きるというのが、彼女の人生だった。完全に安全な場所で育ち、巣立って冒険する夢しかいだいていなかった私は、言葉も出なかった」取材の裏の貴重な経験が語られるのだが、訳が……残念。
読了日:10月03日
シェルパ斉藤の親子旅20年物語 (わたしの旅ブックス)
シェルパ斉藤さんは有名人です。どれくらい有名かというと、ヒッチハイクをしていると、車の運転手さんが「シェルパ斉藤さんですか」と言って止まってくれることがあります。だけど、息子の一歩君にはかないません。自転車で、ヒッチハイクで、野宿をしたり、温泉に入ったり、ゆったりした気持ちになれます。一歩君の成長を目を細めて見守るお父さんが温かい。
読了日:10月02日 著者:斉藤政喜