『古事記』に登場する伝承の人物「オトタチバナヒメ」

ヤマトタケルの妻で東国平定に同行し、荒れる「走水の海」を鎮めるためにタケルの身代わりとなって自ら入水する。

 

舞台となった「走水の海」は現在の横須賀市走水沖にあたり、東京湾の外湾と内湾を出入りする流れがあり、手漕ぎじゃ危ないという難所だそうだ。

 

旅の道中、主人公が海難に遭う説話には一連の要素があるという。

主人公が荒れる海に遭遇し、同行の者が理由を考え助言する。

助言のとおりにすると危難を乗り越えられるというものだ。

 

典型的な話では、助言者の男性が女性を海に捧げることを提案し、実行されるのだが、オトタチバナヒメの場合は、自ら入水するところが極めて特異だという。

 

東京湾沿岸部を中心に、伊豆半島から房総半島沿岸にかけて40あまりの伝承を確認したという筆者。

 

『古事記』には、海辺に寄ったヒメの櫛を御陵に納めたとの記述があるが、各地でまつられているもののうち、櫛は11例、袖や衣が多く、遺骸が漂着したとの伝承も11例あったという。

 

30年以上の研究の成果は『オトタチバナヒメ伝承』(岩田書院)にまとめられたそうだ。

機会があれば読んでみたい。