特に深刻な事情が

あるわけではないですけれど

私にはどうしても

逃避が必要なのです

 

フランソワーズ・サガンが当時のパートナーに宛てた「書き置き」からとったというタイトル。


「あなたへ。疲れました。疲労困憊。もう人に会うのが嫌になったので、ひとりで数日出かけてきます。(中略)特に深刻な事情があるわけではないけれど、私にはどうしても精神的な休養が必要なの」

 

「休養」を「逃避」と置き換えたのは、現代を生きる私たちの切実な望みに近いように思ったからだそうです。

 

1「前向きに生きる」から逃げたい

2「人づき合い」から逃げたい

3「家庭」から逃げたい

4「仕事」から逃げたい

5「世間」から逃げたい

6「日常」から逃げたい

7「良識」から逃げたい

8「孤独」から逃げたい

9「貞操」から逃げたい

10「夢を叶える」から逃げたい

11「運命」から逃げたい

 

「逃げ」という後ろ向きな態度ながら、「生きていく」「生き続ける」ための逃避です。

 

したいと思ったこと、楽しいと感じることをすればいい。

でもそれには人に意見を求めてはいけない。


レイモン・ジャン『読書する女』

 

女は男を必要とするし、男も女を必要とする。

その意味では、自立という言葉は無意味である。


大庭みな子『続 女の男性論』

 

道徳教育とは偏見教育のことです。


澁澤龍彦『快楽主義の哲学』

 

苦しくてどうにもならないとき、何度も読んだ本を開いては、胸に響く箇所を写経のように書き写したという筆者。

 

「生きることは義務」という言葉に、なぜか救われたような気になるといいます。

生きる価値があるかどうかの問題ではなく、とにかく、生きなければならない、それだけだと。

 

いつでも、死ねる。

そんな、つまらんことをやるな。

いつでも出来ることなんか、

やるもんじゃないよ。


坂口安吾『不良少年とキリスト』

 

人生と真面目に向かい合う心があって、その心が涙を流して決めた道はまちがっていないはずです。いいえ。まちがいなどない。正しいこともない。まちがいとか正しいとかそんなのは人生にはない。あるのはただ、その人ひとりの生き方なのです。 山口路子

 

2019年7月15日第1刷発行

大和書店

定価(本体680円+税)