本書で取り上げる種の絶滅はいずれも、何らかの形でヒトが関与したものです。原因は単純ではなく、たいていは乱獲、生息地の改変、外来種、伝染病といった、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。(中略)大部分の種については、いつ絶滅したかさえ正確に知ることは不可能で、生息調査が何度も空振りに終わったあと、おそらくこの頃にはもういなかった、と推定するのが精一杯です。さらに、多くの種が、科学界に存在を認識され名づけられたあと、あまりに短い間に死に絶えた事実には愕然とさせられます。今よりはるかに人口が少なく、技術も未発達だった時代にも、ヒトはそれだけの影響力を持っていました。現代人が手にしている力の大きさに、薄ら寒さを覚えます。(訳者まえがきより)
詩人でもある著者が、有史以前から現代までに絶滅した数多くの動物種の中から41種を厳選し弔辞をしたためています。
カロライナインコ
シマワラビー
バライロガモ
ヨウスコウカワイルカ
絶滅しているので、みんなイラストです。
今や標本や剥製でしか残されていないのです。
『人類が滅ぼした動物図鑑』
令和3年6月30日発行
丸善出版
定価5280円(本体4800円+税)
「絶滅はよくないことだ、絶滅から種を救うのはいいことだ」
そんなに単純なことでもないと考えされられたのは、『絶滅できない動物たち』(M・Rオコナー著)からです。
野生では生きられず、アメリカの動物園で元の環境に戻す賢明な取り組みが行われているキハンシヒキガエル。
テラリウムに閉じ込められ、人口噴霧システムで水分を保たれ、特別に飼育された虫を餌として与えられています。
「まるで病院で生命維持装置につながれた患者をのぞいているようだった」と筆者は言います。
人が放った別種のピューマと交雑することでかろうじて生き延びているフロリダパンサー。
「保護」により僅か30年で「進化」してしまったアメリカのパフフィッシュ。
人が介入すればするほど「自然」から遠ざかっていくというジレンマに陥ります。
理論上可能だという「ゲノム編集」による絶滅生物の復活。
であれば、ネアンデルタール人を再創造することも、もはやSFの世界ではないのだとか。
自然の消滅で人類が失うものは何か。
「人類が支配する風景と気候工学の未来で、わたしたちが実際に失うであろうものは「謙虚さ」だ。私たちはいずれ死ぬ、という大事なことを思い出させてくれる能力だ。」と筆者は言います。
自然を支配しようとすればするほど、地球上の生物のしくみが驚くほど複雑にたがいにつながっていることがわかる。わたしたちは、自分たちが意図せず引きおこすさまざまな結末を予測できないし、自然災害、病気、生態系の消失、さらなる絶滅といった極端な力を発揮するなどもってのほかだ。
『絶滅できない動物たち』
2018年9月26日
ダイヤモンド社
定価(本体2200円+税)