鎌倉時代の歌人、藤原定家が『明月記』に記した「赤気」の記録に導かれ、江戸時代、昭和、飛鳥時代へと続く、時空を超えたオーロラ探索の旅が始まる―

 

ハロウィン・イベント

ハロウィンの時期ですが、宇宙の専門家の間でハロウィン・イベントといえば、2003年10月末に起こった太陽の爆発的な活動や磁気嵐のことなんだそうです。

 

このとき、太陽に巨大な黒点が幾つも出現し、コロナ質量放出と呼ばれる爆風が吹き、地球には磁気嵐が発生したのだそうです。

 

日本への影響としては、10月29日と31日、北海道でオーロラが観測されています。

 

大きな磁気嵐が起こると、ふだんは見られない地域にオーロラが出現することがあるそうです。

 

このハロウィン・イベントに似た現象の、日本最古の記録が『明月記』の「赤気」のことなのではないか。

 

1204年2月21日、晴れ。日が暮れてから北および北東の方向に赤気が出た。その赤気の根元のほうは月が出たような形で、色は白く明るかった。その筋は遠くに続き、遠くの火事の光のようだった。白いところが五箇所あり、赤い筋が三、四筋。それは雲ではなく、雲間の星座でもないようだ。光が少しもかげることのないままに、このような白光と赤光が入り混じっているのは不思議なうえにも不思議なことだ。恐るべきことである。(『明月記』現代語訳)

 

 

著者は国立極地研究所で働く研究者です。

極地研は南極の昭和基地を運営していることでも知られています。

国文学研究資料館(国文研)と同じ場所にあり、共同研究を試みた一例として本書が出版されたそうです。

 

宇宙空間物理学を専門とし、とくにオーロラの研究をする筆者が、『明月記』、江戸時代の『星解』、飛鳥時代『日本書紀』に見られる、オーロラかもしれない記述の謎に迫ります。

 

 

 

三毛猫たけしをご存じでしょうか。

 

1958年2月11日、南極昭和基地から、通信係の佐間敏夫さんの膝に抱かれて帰国した猫がいました。

 

この日、磁気嵐のために本国と連絡が取れず、荒天の中、第二次越冬隊は越冬を断念。

 

第一次越冬隊が残した犬が置き去りにされることになりました。

生き残ったタロとジロもこの中にいました。

 

この磁気嵐が地球を襲った日、日本でもオーロラが見られたのです。

翌日の朝日新聞は「秋田市上空のオーロラ」として掲載。

 

オーロラがふだん見られないところで見られるということは、地上にも大変な影響があるということなんですね。

 

 

ちなみに次に太陽の活動が活発になるのは2025年、地軸はアメリカよりに傾いているので、カナダあたりでオーロラを見ることができるかもしれないとのことです。

 

 

このもっとも巨大な書すなわち宇宙は数学の言葉で書かれている―ガリレオ・ガリレイ

 

 

2020年10月31日第1刷発行

化学同人

定価(本体1500円+税)