日経夕刊に『人間発見』というシリーズがあります。

月曜から金曜まで、1人の人物を取り上げます。

 

今週はボランティアの尾畠春夫さん。

以前、秘色さんの記事でも紹介された方で、ご存じの方も多いと思います。

 

赤いねじりハチマキに赤いシャツ。

地震や集中豪雨の被災地に駆けつけます。

2018年、山口県の山中で行方不明になった2歳の男の子を無事発見し「スーパーボランティア」と呼ばれるようになりました。

81歳です。

 

1939年、大分県国東生まれ。

腕のいいげた職人だった父は靴が出回ると仕事を失い、家で酒ばかり飲むように。

4男3女の三男坊だった尾畠さんは「大飯ぐらい」とののしられ、農家に奉公に出されます。

朝から夜中までの畑仕事で出席日数が足らず、中学も卒業できなかったそうです。

 

その後、姉の勧めで魚屋になり、結婚して、店を構えるまでになります。

開業資金が足らずに土建屋で働いた経験が、後のボランティア活動に生かされました。

 

 

尾畠さんは65歳で魚屋をたたむことに決めていたそうです。

15歳から働きづめ、50年働いたらやめよう、そう思っていたのだそうです。

 

一番やりたかったのがボランティアでした。

 

学歴のない尾畠さんは、周りの人に助けられて商売が成り立ち、生活ができた、今度は自分が社会へ恩返しする番だと、決めました。

 

 

中越地震を皮切りに、東日本大震災では500日間、16年、熊本地震、18年、西日本豪雨、19年、九州豪雨と、被災地に赤いシャツがあらわれます。

 

活動中は「対価、物品、飲食を求めず」すべて自前。

 

月6万円以下の年金で、ボランティア活動のため全国各地に向かう車の燃料代もねん出します。

 

朝4時に起きて8キロのジョギング、食事は庭で採れる野菜や野草。

スマホもパソコンも持ちません。

 

会社員でも商売人でも自分で決められることは少ない。上司がいて取引先がいて顧客がいる。ボランティアは違います。すべて自分で決定できる。一方で自分のことは自分で責任を持つ。他人に頼らない。

 

でもね、そんなに難しく考えなくてもよいのですよ。

 

道に落ちているゴミを拾うのだって立派なボランティアです。

 

子どものころの栄養不良で歯は全部抜け落ちたものの、病気知らず。

健康保険証はもう十数年使っていないそうです。