桃紅さんのすばらしい書にご本人の言葉が添えられています。

全部引用したいくらいです。

 

私は

こういう線を引きたいと思って、

一本の線を引いた。

しかし現実にできた線は、

思った線とは違う。

人生も同じ。

人は、

こういうふうに生きたいと思って、

しかし現実の人生は違う。

 

仏典や中国の古典から

千利休や芥川龍之介

中原中也や宮沢賢治が引用されています。

 

人は変わるんですよ。

進歩するのか退化するのかは、わからないけど、

少しずつ変わっていることは事実。

一切は変化する。

 

物質だって、古びていくという鈍い変化がある。

生きているものは、一分一秒、変化している。

昨日のあなたはもういない。

 

 

桃紅さん勉強家だったんだろか。

昔の人はみなこのくらいの教養があったんだろうか。

 

 

私の引いた一本の線は言い訳ができない。

逃げも隠れも一切できない。

どこにも、誰にも、

責任をなすりつけることができない。

一本の線は、私と一体になっている。

私そのもの。

 

あなたの人生も一本の線。

 

 

最後に

私の言葉なんて、無意味です。

百万の言葉より、

一本の線が私の伝えたかったことです。

どうぞそう思ってください。

 

篠田桃紅(しのだとうこう)

美術家

1913(大正2)年生まれ。

 

 

2016年4月20日第一刷発行

幻冬舎

定価(本体1300円+税)