主に病気のため、顔に特徴のある9人。
リンパ腫、動静脈奇形、網膜芽細胞腫、口唇口蓋裂、アルビノなど、
生まれつきの人もいるし、途中からの人もいる。
中島勅人(のりと)さんは生まれつきのリンパ管種のため、顔のほっぺたの部分が膨らんでいる。何度か手術するが劇的な効果はなかった。
自分の症状と徐々に折り合えるようになったのは、人との出会いが大きいという。
顔のことでイラ立っていた時期、ある看護師さんから厳しい口調で言われたそうだ。
「君は、いつも自分のことばかり気にしてるけど、君を大事に思ってくれている人のことを考えたことはあるの?」
見た目に症状がある人は就職も困難になる。
中島さんは、顔のことを言われたときは、自分でフォローしてアピールしていかなくてはならないと気づき、前向きな回答をすることで乗り越えた。
消極的になっている人に「外に出ること」とアドバイスする。
中島さんはなかなかのおしゃれ。
おしゃれをすることによって、顔以外の部分に他の人の注意をそらす効果もあるという。
河除(かわよけ)静香さんは動静脈奇形のため、顔が変形している。
顔の症状でつらいことはと聞かれ、男子からのいじめがひどかったと言うとき、今でも涙ぐむ。
結婚できるかと悩んだこともあったが、今では夫がいて、子どもがいて、一人芝居に挑み、学校司書として働く。

思春期の頃、「朝起きたら顔がむくんでいる」ということを異常に気にする「醜形恐怖」と呼ばれる強迫観念に悩まされていたことから、外見へのこだわりや劣等感を解決する方法をずっと探し続けていたという。
「人は外見じゃない。中身が大事だ」―――これは一般的によく言われる言葉ですが、この言葉を単なる気休めにしか感じない人も多いでしょう。そして実際に、多くの人が他者を判断する際に見た目に重きを置くのも事実です。
それは“乗り越えた悩みが大きければ大きいほど、人は魅力的になれる”ということだそうだ。
それはきっと、顔に限った話ではないと思うのです。世の中の人は誰だって、完璧な状態になるということはなく、いつも何かの悩みを抱えながら、その悩みとそのときそのとき、折り合っていくものだと思うんですよ。(中島さん)
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