歌人の笹公人さんが、以前からあたためていたという「アイドル歌会」のお話です。

 

毎日が非日常ともいえる特殊な時間を生きているアイドル。

短歌の題材には事欠かず、職業柄、サービス精神旺盛で頭の回転が速く即興にも慣れている。絶対におもしろいだろうなとひそかに思っていたそうです。

 

選者には短歌界の永遠のアイドル俵万智さんを迎え、その名も『アイドル歌会@サラダ記念日』として7月6日に開催。

 

アイドルとはいえ、短歌をいきなり詠めるはずもなく、指導も俵万智さん。

個人指導してもらえることのすごさをアイドルたちがどこまで理解していたかわからないけれども、「野球少年が大谷翔平からボールの投げ方を教わるようなものだ」と表現してます。

 

で、できあがった短歌。

 

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お父さん?恋人?友達?誰目線?遠くて近い特別たちよ

真山りか(私立恵比寿中学)

 

握手会に来る人の中には「ちゃんとご飯食べてるか?」「なかなか会えなくてごめんね」とか、言う人がいるそうです。

どの目線のファンも自分を応援してくれる特別な存在だという、ファンへの愛情が感じられます。

 

その飛沫 君が振り撒く ほとばしる ライトに照らされ虹色幻想

駄好乙(たむこ・鶯籠)

 

「虹色幻想」とは、コロナ以前は、ノリノリのファンの汗や飛沫が照明に映え、美しく見えたが、コロナ以降は、その飛沫が汚く恐ろしいものにも見えるのを詠んだといいます。

 

 

「変わったね」君に言われて「変わったよ」変わらなければ続けられない

鹿目凛(でんぱ組.inc)

 

 

髪型を変えただけで「押しをやめる」と駄々をこねるファンもいるそうです。「しかし一人一人のファンの理想に応じられるはずもなく、一見突き放すような上の句と、下の句の決意のコントラストが鮮やか」と、笹さん。

 

私もこの句はなんか好きだなあ。

 

アイドルって深いですね。

 

お読みいただきありがとうございました。