原題は『ネバ―・ホーム・アローン』
直訳すると「家に一人ぼっちではない」というような意味だが、それどころか、実は、私たちの家には、細菌、真菌、節足動物、その他、夥しい数の生き物たちが棲みついている。
著者らが行った最近の調査によると、現在までに、家々から20万種もの生物が見つかったという。(訳者あとがきより)
著者が協力を募って、40世帯の一般家庭から綿棒でホコリを採取してもらったところ、40世帯から、合わせて8000種類近い細菌が見つかったという。
サンプルの採取箇所は冷蔵庫、ベッドの枕カバー、トイレ、ドアノブ、キッチンカウンター。
見つかった細菌の一部は、人が歩き回ったときに落ちる皮膚断片を餌にするもの。
どんな人でも、1日におよそ5000万個の「鱗屑」を落としているそうです。
さらに極寒の冷蔵庫を好む菌、酷暑の砂漠より暑いオーブンを好む菌、さまざまな菌が見つかっています。
微生物はいるだろうけど、動物がいるとなるとちょっとぎょっとします。
その多くは昆虫類ですが、調査によると1軒の家から見つかった節足動物は100種類以上。
200種類見つかった家もあったそうです。
ハエ、アリ、カ、クモ、そしてもちろんチャバネちゃん。
家をどれほどしっかり閉め切っても、節足動物がすぐそばにいるらしい。
こういう話を聞くと、駆除したくなるのが人間ですが、家に棲んでいる生物は多くの場合、無害か人にとってはむしろ有益。
強力な薬などで除去しようとすると、かえって問題が生じます。
化学物質で攻撃していくうちに、防御行動や化学的防御力を進化させた病原菌や害虫が有利になり、人間の役に立ってくれる生物種は圧倒的に不利な状況に追い込まれてしまうのだそうです。
そうなれば、
明かりをつけたとたんにそそくさと逃げていき、人間がいなくなったり、明かりが消えたりするとすぐにまた集まってきて傍若無人にふるまうミニチュア軍団に囲まれて生活することになるだろう。
ある生物が何の役に立つのか、などと聞かれると、生物学者は神経を逆なでされたような気持になる。それはクソみたいな愚問である。生物学者たる私たちは、ある特定の生物種には良いも悪いもなく、その本質的価値に大小はないと学んでいる。
これまで家の中というのは生物学者からあまり目を向けられていなかった場所だそうですが、調査したら家の中は生態系そのものだったのです。
家の中に生物がたくさんいることを気持ち悪いと感じるのは、洗剤会社のCMによるところもあるんでしょうね。
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20万種の生き物と一緒に暮らしているなんて心強いではありませんか。
身の回りのたくさんの生物は心身の健康にも役立っているそうです。
♪ひとりじゃないって~すってきなことね~♪と歌って、家の中の素晴らしい生態系に感謝しましょう。
隅の蜘蛛 案じな煤は とらぬぞよ
小林一茶
2021年2月28日発行
白揚社
定価(本体2800円+税)