それは、2016年6月、富山市議会に提出された議員報酬月額60万円を10万円引き上げ、70万円にするという条例改正案から始まった。
議員報酬60万円に対して、31・何パーセントの税金がかかる。
国保やもろもろを引いていくと手元には27万円しか残らない。
退職金もなければ、保証もない。
家族を養うことすら難しいという理屈だ。
この法案は不透明な審議会を経て、6月15日、本会議で可決される。
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チューリップテレビは富山に拠点を持つ1990年開局のTBS系の民放テレビ局です。
市政担当記者の砂沢さんは、議員には「第二の報酬」とも言われる「政務活動費」がある。
生活は本当に苦しいのか?
議員たちは何にお金を使っているのかと疑問を持ち、政務活動費の支出伝票の情報開示を請求します。
2013年から2015年までの3年分。
1年分で5000枚。
コピー代だけで15万円。
この領収証の束を通常の業務の後、コツコツと見ていく中で、市議会のドン、中川勇議員の領収証におかしな点を見つけます。
開いてもいない市政報告会の資料のコピー代21万7000円。
これを皮切りに次から次へと出てくる不正請求。
お茶代だ、お菓子代だと、使ってないお金がどんどん議員に流れてることが発覚します。
中川議員は「酒が好きだった、酒代に使った」と釈明。
税金なんだけどね。
他社も追随し、ほかの議員の不正も暴かれ、結果、14人の議員が辞職に追い込まれるという前代未聞の結末となりました。
当時、TBSテレビでも特集が組まれ全国放送されたのは、この問題が富山市のみならず全国でも行われている可能性があったからにほかなりません。
問題はなくなったのでしょうか。
残念ながらそうは思えません。
本文でギリシャの格言が引用されていました。
「政治に関心のない国民は愚かな政治家に支配される」
この本では、地方の小さなメディアが、圧力に屈しないで、保守王国富山の自民党議員を追い詰めていく様子が描かれます。
チューリップテレビでは、議員報酬引き上げがなければ、この問題に気づくことができなかったかもしれないという反省もあるそうです。
引き続き、権力を持っている人たちが何をしているのか、みんなでよく見ていかなくてはいけないのだろうと思います。
2017年5月25日 第1刷発行
岩波書店
1800円+税