河田桟という力のない女の人が、カディという好奇心旺盛なちょっと元気なウマと暮らすため、与那国島に移住してしまったお話です。
前著の『馬語手帖 ウマと話そう』に続き、カディとの島での日々が語られます。
河田さんとカディのかかわりは、調教とは違う、ちょっと変わったアプローチです。
◆336時間◆
ウマが新しく来た者を、「群れの仲間=身内」として受け入れるまで、大体2週間ぐらいだそうです。
(もちろん河田さんはカディと仲良くなった経験しかないのでちょっと偏ってると自分でも言ってます)
とりあえず2週間、「一緒にいる」時間を過ごせたら、ウマは「あなたがそこにいることが、わたしたちにとってふつう」と受け入れてくれるようです。
ウマは変化に敏感で、「いつもと違う感じ」がなにかあると、すぐに気がついて緊張して、嫌な顔をするそうです。
ところがいったんその刺激を受け止めるとそれに合わせて自分のこころや行動を変化させていく「やわらかさ」ももっているんですって。
「受け入れ変化していく力」があるから、ヒトを乗せて走ってくれたりするんでしょうね。
………………………
◆ヒトが馬語を話すために避けて通れないプロセス◆
自分のこころとからだの言葉を一致させること
ウマは常にこころとからだの言葉が
一致しています。
残念ながら、ヒトはそうではありません。
むしろ、コドモのころからずっと、自分の「こころの言葉」を
表に出さないようにする、という訓練を
積み重ねてきていますよね。
自分のこころとからだの言葉を、
奥の奥まで、
ようく感じてみること。
そして、
「こころの言葉を外に出してはいけない」
という縛りを解いてみること。
そうやってはじめて、
自分のこころとからだの言葉がつながり、
馬語を話せるようになるというわけです。
ウマと馬語で話す練習は、
自分のこころとからだにとって、
すばらしいエクササイズになるはずです。
「馬に通じない」イコール
「自分のこころとからだの言葉が一致していない」
という、答えあわせがすぐできるので、
とてもわかりやすいと思います。
ただ、そばにいる。
「NO」はわがままじゃない。
河田さんとウマとの関わりは、ヒトとヒトとの関わりにもたくさんのヒントを与えてくれます。
「強い人」も、状況の変化によって、
力のない状態になることも
あるかもしれません。
そんなときに、
この本のことを思い出していただけたら、うれしいなと思います。
2015年3月20日 初版第1刷発行
カディブックス