1962年宮崎県生まれ。87年、NHKに入局。山口放送局、東京報道局社会部記者などを経て、2012年より大阪報道局。森友事件報道をきっかけに記者を外され、NHKを退職。現在は大阪日日新聞編集局長・記者。

 

山口放送局での新人時代から、森友学園で政権に不利な報道をしたことから、記者を外され退職するまで、様々な事件現場で、どんなふうに取材してきたかが語られます。

 

その多くは私でも知ってるような大事件ばかり。

 

阪神大震災当日、なぜか東京にいた大阪放送局に所属する筆者が現場に向かう緊迫感。

記者も命がけなのです。

 

さっさと避難所をたたんでしまいたい行政に困っている当事者を取材して、特集番組を組む。

避難所閉鎖は免れませんでしたが、後々、当時の人から感謝が届きます。

 

テレビの宿命で絵(動画)がないと放送できない苦労。

そのため、時にずかずかと土足で踏み込む取材をした失敗談。

興味は尽きません。

 

107人が亡くなった福知山線の脱線事故。

JR西日本の旧態依然とした体制と権力と結びついた不自然な決着がありました。

 

「取材は愛」。それがあるなら「人の不幸」の取材がギリギリ許される。

 

「人の不幸」を取材するのは、不幸が二度と起きない世の中につなげるため。

 

相手のことをどこまで真剣に考えられるか?結局、大切なのは「人」なんだ。

 

それが、記者生活33年で得た結論である。

 

きのう日本橋高島屋にオープンしたカフェ「黒澤文庫」のガレットがおいしいとかは直接確かめることができますが、多くの情報は自分の足で調べることができないものです。かといって○○新聞に書いてあった、NHKでやっていただけで信用するわけにはいかないでしょう。

 

組織は組織を守るための行動をとります。

人も同じです。

だから、どの情報を信用するかは大切なことでしょう。

 

 

『週刊文春WOMAN』2021春号131ぺージに1995年自宅が火事になり、小学6年生だった娘のめぐみさんを亡くした青木惠子さん(57歳)の記事があります。

 

青木さんは娘さんの死亡保険金の支払手続きをしていたことから、殺害を疑われ、取り調べを受け、誘導の結果、自供してしまい、20年間獄中にとらわれてしまいます。

 

2016年、再審で無罪を勝ち取りますが、国や警察は誤りを認めないし、謝罪もしません。

なので、「本当は有罪なんでしょ」という噂も飛び交うそうです。

 

この記事を書いたのが筆者の相澤さんです。

 

冤罪は何が真実か当事者しか分からないことです。

だけど、当事者に向き合えば、この人は嘘を言っていないとか、自分なりに判断できるかもしれません。

 

青木さんの話は直接聞けないけど、相澤さんの書いたことなら信じてもいいかなと思いました。

 

 

2021年2月10日 初版発行

発行 株式会社KADOKAWA

定価:本体900円(税別)