『ザ・マジックアワー』という映画は何度も見ました。
マジックアワーとは、日没後の辺りが残光に照らされているほんのわずかな、美しい時間帯を指す映画用語。
映画の中でも背景の空が印象的でした。
島倉二千六さんは、撮影所の小道具係の仕事を得て、1958年、18歳の時、久松静児監督の「怒りの孤島」で背景画を手掛けることになった背景画家です。
その後、「モスラ対ゴジラ」「ウルトラマンシリーズ」といった特撮映画の「雲」の描き方が評判を呼び、テレビや映画にも仕事を広げ、「雲の神様」と呼ばれ、80歳になった今も現役です。
最近では庵野秀明監督の「シン・エヴァンゲリオン」でも島倉さんの「雲」が使われているそうです
黒澤明監督からの注文は「私の夢に出てきた夕焼けを描いてほしい」というもの。
これで思い出したのが、聖書の創世記の中に出てくるお話。
主人の妻から強姦の濡れ衣を着せられ、監獄に入れられた奴隷ヨセフが、エジプトの王ファラオの夢を解き明かして、一躍、支配者の地位を得たというエピソードです。
夢に出てきた絵を描いてほしいとは、さすが黒澤監督。
映画界の王様です。
島倉さんは監督の注文に見事に応え、「あの絵はよかったよ」と打ち上げでビールを注いでもらったそうです。
最近の映画はCGが駆使され、「雲」もコンピュータで描けるんでしょうね。
「人の手で書くからこそ出る味があると信じ、今日も筆をとっている」とのことです。
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