ベッドの4本ある脚のうち、3本が外れてしまった。ベッドが傾き、寝心地が悪い。さて、どうするか。
「脚を1本足すと10セントかかる」とだけ説明し行った実験では、197人のうち半数以上の人が3本の脚を追加した。脚の撤去にコストはかからないが、41%の人しか思いつかなかったという。
人間は「引く」より「追加」で問題を解決する傾向があるらしい。
・エッセーを改善するように頼まれると、多くの人は文章を長くした
・レシピを改善するように言われると、人々はより多くの材料を投入した
・旅程を整えるよう頼まれると、多くの人は立ち寄る場所を追加した
引き算の発想があっても、引く決断は葛藤を生む。
周りから見たら価値がないとも思えるモノをため込み、処分できない行為を「ホールディング」と呼び、精神医学や臨床心理学の研究対象になっているそうだ。
「勇気をもって引き算を」と訴えるのは静岡県立大学の岩崎邦彦教授。
市場の熟成や多様な需要、国際競争に焦り、新規事業に手を出す誘惑に駆られる企業は多い。そんなときに「引き算が革新につながる」
「ウォークマン」は録音機能にこだわらず、「iPhone」はダイヤルボタンをなくした。
岩崎教授が行った、中小企業7448社への調査でも、コロナ下、規模の拡大よりも質の充実を志向する「引き算」企業は影響が小さかった。
人間が引き算に気づきにくいとしたら対策は自覚しかないだろうという。
大切なものを引き去らないようにと注意しているが、それが何かを見極めるのは難しい。
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