山﨑努といえば、『天国と地獄』の誘拐犯、『スローなブギにしてくれ』のムスタングの男、『マルサの女』の権藤さんですが、本読みでもあったんですね。

 

平成18年9月から平成24年3月まで「週刊文春」に連載された「私の読書日記」51回分が収められています。

 

紹介されている本はすごくたくさんあります。

『いいかげんワールド』眉村卓

『きみのためのバラ』池澤夏樹

『あたらしい図鑑』長薗保浩

 

武田泰淳の『目まいのする散歩』と百合子の『犬が星見た ロシア紀行』を読み比べたり、家族で「天国と地獄』のDVDを見るエピソードが挟まれたり、出てくる本、出てくる本、みんな読みたくなります。(困ります)

 

「逃亡者が好きだ」という一文から始まり、『イラク 米軍脱走兵、真実の告発』(ジョシュア・キー)を紹介するくだりはすごいです。

「僕は不勉強で」などといいながら、アメリカの貧しい若者が兵士になるシステムをさらりと紹介し、戦場でサンドイッチを敵兵に売るイラク人に対して、「この人たちにはほかに生計を立てる道がないのだなと」気づく青年。

「敵、味方、どちらも殺し合いの前線にいるのは貧しい者だけなのだ」

 

本のレビューも結局は、ふだん何をしているか、何を考えているかというところに行き着くのでしょう。こういうのを読むと、本の感想なんて恥ずかしくって書きたくなくなります。(書くけど)

 

読みたいと思いながら、まだ読めていない『へたも絵のうち』(熊谷守一)の紹介はこんな感じです。

 

「石ころをじっとながめているだけで、何日も何月も暮らせます。監獄にはいって、いちばん楽々と生きていける人間は、広い世の中で、この私かもしれません」とあって、惹かれる。

囚人役は好んで何度もやった。そういえば『刑務所の中』という映画で香川照之と共演したことがある。彼は大きな目玉をさかんにくりくりさせ、無邪気で悪戯っ子のような犯罪者を演じていた。不気味だった。