出身地が同じ石川啄木に、高校生の頃からライバル意識を持っていた。一生に一度、歌集を出したいと思っていたが、あるとき、26歳で亡くなった啄木であれば、没年がすぐそこだと気づく。

 

一生に一度のその一生が長寿であるとは限らない。渋民出身のわたしはいままで随分と啄木に喩えられ、比べられてきたのだから、ここで一度、彼が死ぬまでにちゃんと短歌で張り合おうとひらめきました。(まえがきより)

 

 

東京の人は知らないだろうけど雪はときどき光るよ、青く

 

 

相槌がうまいですねと褒められてさみしくなって雪を見ていた

 

 

死はずっと遠くわたしはマヨネーズが星形に出る国に生まれた

 

 

「水中で口笛」とは

息苦しい思いで生活をどこかしてて、その気持ちを隠すように、平気なふりをして……本当は水中にいて溺れそうな感じなのに、一丁前に口笛吹いているような生活だったもので、そういう生活のおかしさとか、切実さみたいなものが入った一冊かな。(著者インタビューより)

 

 

 

働けば働くほどにうれしくてレモンジュースにレモン汁足す

 

 

 

啄木に対する腕相撲のつもりで編んだ歌集は、最終的には彼へのハイタッチのような歌集になった気がします。

 

どうだ。わたしはいま、ここにいます。

(あとがきより)