南極に置き去りにされた「タロとジロの奇跡」が全国に驚きと感動の渦を巻き起こしたのは1959年(昭和34年)1月。

この年は、皇太子明仁親王と正田美智子さんがご結婚。

東京が1964年夏のオリンピック開催地に決定したり、巨人の長嶋茂雄選手が天覧試合で阪神の村山実投手から歴史的サヨナラ本塁打を放ったりと、ニュースが多い年だったそうです。

 

〈そんな中でも、タロとジロが南極で生きていたというビッグニュースは、人々の心をつかんで離しませんでした〉

後に映画化もされました。

 

監修の北村泰一さんは南極観測第一次越冬隊の犬係でした。

第三次越冬でタロ、ジロと再会したご本人でもあります。

 

タロとジロの生存は望外の喜びだったものの、長年、気にかかっていることがありました。

それはタロとジロ以外の犬がどうなったのかということです。

 

北村さんが、タロとジロ以外に南極で生きていた犬がいるとの情報を得たのは、第三の犬の遺体発見から14年後。

なぜ、そんな大事な話を北村さんすら知らなかったのか。

そこにはどんな事情があったのか。

 

タロとジロ以外の犬の運命をたどる旅が始まります。

第一次越冬隊から60年。

高齢で記憶も薄れつつある北村さん。

話を聞いてまとめるのは嘉悦さん。

 

〈本書は、第一次越冬隊最後の生存者となった北村泰一氏の証言と推論をもとに、公式資料、公的資料を照合して可能な限り事実関係を確認した上で構成した一つの物語です〉~あとがきより

 

南極という誰も見ていないところで起きたことですから、こうだったであろうということしか言えないのは事実です。

 

しかし、そこにはタロとジロ以外の犬たち、そして、人間たちの物語がありました。