ゴッサムとは、イギリスのノッティンガムシャー地方にある実在する村の名前ゴータムから取られたニューヨークの異名。

 

「モルグ街の殺人」などで知られるエドガー・アラン・ポー。

作品は日本にも深く浸透し、日本文学の近・現代作家でポーの影響を受けていない作家がほとんどいないくらいその影響は普遍的なのだそうです。

 

ポーは、小説家、詩人でもあり、様々な媒体に紀行文を寄せるジャーナリストでもありました。

 

本には、ニューヨークの街の発展や喧噪、文壇事情を、ポーが、フィラデルフィアの小さな出版社「コロンビア・スパイ」に七回にわたって書き送った書簡文学が収録されています。

 

何とも皮肉っぽい文章なのですが、ポーがぶらついた当時のニューヨークの街の様子を、起きた出来事とともに読むことができます。

 

「手紙3 1844年5月27日 ニューヨーク発」

読者諸氏がゴッサムを訪れたときは、五番街へ出かけ、四三番通りに近い配給用水貯水池へ遠出してみるのがよいと私は確信しています。貯水池の周りの歩道からの眺めは特に美しいですよ。この標高からはヨークヴィルにある北貯水池、砲台公園までの街全体、それに加えて港の大部分、そしてハドソン川とイースト川の長い広がりが見渡せます。

(~中略~)

ここ二〇年、長くて三〇年のうちに、船舶、倉庫、埠頭以上に幻想的なものをここでは何も目にしなくなるでしょう。

 

ほかにも、ポーの、文筆家としての劣悪な労働環境をうかがい知ることができる「雑誌社という牢獄秘話」(1845)

「直覚対理性-黒猫序文」(1840)

「貝類学手引書-序文」(1839)などを収録。

 

翻訳は伊藤詔子

出版社は小鳥遊社

 

日本ではあまり紹介されてこなかった貴重な資料でもあるようです。