「最近物忘れがひどくなった、以前ほど集中力がなくなった、ストレスを感じやすくなったということはないだろうか」

 

「なぜ人は過食に走るのか、なぜこの10年でうつや不眠が増加したのか、なぜ私たちはコロナの話題に過剰に反応するのか、近い将来AIに取ってかわられない仕事は何なのかといった点についても、研究結果と進化の見地から「なるほど!」とうなってしまうような答えを与えてくれる」~訳者あとがきより

 

スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセン待望の新刊。

2019年に発行されるや、42週にわたってベスト20にランクイン。

 

急速に普及したスマホが私たちの脳にどんな影響を与えているのか。

頻繁にスマホを見てしまうのにはなぜか。

 

脳内物質であるドーパミンが放出される仕組みに鍵があるようです。

脳が喜ぶのは、「かもしれない」と「もしかしたら」

 

「もしかしたら」お気に入りのあの人のブログが更新されている「かもしれない」

「もしかしたら」自分の投稿にいいねがついている「かもしれない」

 

「もしかしたら」と「かもしれない」への期待で、10分に1回、スマホを開いてしまうこともあるそうです。

 

大人もさることながら、心配なのは子どもたちへの影響です。

コロナ禍で、すべての子どもたちにタブレット端末を提供することが検討されていますが、使い方を間違えると、大きな影響を及ぼしそうです。

 

進化という考えがバックにありますから、同意できない人もいるでしょうと、著者も述べています。しかしながら、実験で得られた結果などを考えると、仮説に過ぎないと退けずに参考にすることができるのではないでしょうか。

 

興味深いのは「ストレス、うつには役割がある」という2章の部分です。

スウェーデンでは2018年現在、16歳以上の100万人近くが、抗うつ薬の処方を受けているそうです。大人の9人に1人という割合です。

 

【以下、本文より】

うつになるかどうかは、あなたの遺伝子が影響する部分がある。といってもうつの遺伝子が存在するわけではなく、何百もの遺伝子が少しずつ貢献している。その遺伝子によってうつになるかどうかが決まるわけではないが、うつになりやすくなる。

 

それに関わる遺伝子を調べていくと、驚くべきことがわかった。うつのリスクを高める遺伝子には免疫を活性化させるものもある。うつと免疫には予想外の遺伝子的繋がりがあったわけだ。ということは、脳にとって、うつは感染症から身を守るための手段なのかもしれない。

 

精神科医として働く中で気づいたのだが、患者が、自分の感情が果たす役割を理解するのはとても重要だ。不安が私たちを危険から救ってきてくれたことや、うつが感染症や争いから身を守るための術だったと知れば、患者たちもこう考えることができる。

 

うつになったのは自分のせいじゃない。ただ、脳が進化したとおりに働いているだけ。その世界は、今いる世界とはまったく違ったのだから。

 

 

スマホが脳に与える影響については、ネットの情報で漏れ聞こえていたところですが、本書を読んで、うまく対処するための方法も知ることができました。

 

新潮社によると、「新潮新書」では読者の大半が男性という本が多かった。本書は女性読者が約半数を占め、子育て世代ともいえる30~40代の女性の支持が目立つといいます。-2/6日経新聞~ベストセラーの裏側

 

★米アプリ調査会社アップアニー社が発表した「モバイル市場年鑑2021」によると、2020年のスマホ利用時間は日本では1日平均3.7時間、全世界では4.2時間に上るそうです。