著者は『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』の奥野克巳さん
生きるためには働かなければならないのか
学校へ行かなければならないのか
生きていくために働かなくていいところ
学校に行かなくていいところ
そんなところに行き人間の根源的な生き方について考えてみることはできないだろうか
そんな思いを胸にボルネオ島で狩猟を生業とするプナンとともに暮らし、観察したことをマンガで紹介してくれます。
森の中で食べ物を探すことに一日のほとんどを費やす狩猟民族
人類学者のサーリンズは、狩猟採集民社会を、食料を探すことに汲々としている貧しい社会ではなく、余暇の多い「始原の豊かな社会」であると捉えなおしたのだそうです。
集団としての富の管理、狩猟の仕方、結婚の仕組み
プナン社会の知恵の営みがつづられます。
前著ともかぶりますが、プナンでは富はみんなのもの
だから、借りても「ありがとう」は言わないし、壊しても「ごめんなさい」もない。
何かをあげると「よい心がけだ」と言われるのだそうです。
時々、仏陀が登場して、ご自分の思想と比較して解説してくれるのもご愛嬌
終盤、マンガに登場する人類学者と学生はこんな会話を交わします。
学生「プナンに来て何だか楽になりました。
先生「?」
学生「だって日本にいると決まりばっかりじゃないですか。
でも、プナンはそうじゃない。
それに何かのために生きていない。」
先生「人は目的や正解がないと不安になりがちですからね。
でもプナンはそれに執着しない。
そこに将来に対する言いようのない不安を生きる私たちにとっての手がかりがあると思うのです。」
奥野さんはこの思いをみんなに届けたくてマンガにしたそうです。