今や知らない人はいないであろう星野源さん。
私が知ったのは比較的最近で、ドラマ「MIU404」と映画「罪の声」(今年だわ)
俳優でミュージシャンで文筆家というのは何となく知っていたのですが、変態だとは知らなかった。下ネタで有名なんだそうですね。
エッセイ集なのでしょうか、のっけから変態の面目躍如。
冒頭「おっぱい」という章では、自分のラジオ番組に届いたリスナーからの「嫌なことがあったりすると人は「死にたいとか」つい言ってしまうものだけど、そんな時「おっぱい揉みたい」と口に出すだけで全てがどうでもよくなり、気持ちが楽になる」というメールに感心して、実際にやってみたら幸せになったとか
「台湾に行く」という章では、台湾ではほとんどの女の子がタイトミニかホットパンツで足を露出しているので、一歩進むたびにすれ違う太ももに顔を埋めたい衝動にかられ、ポワーンと幸せな気持ちになったとか
星野さんはシリアスも笑いも恐怖もリアリティも、全部ないまぜになっているものが好きだとおっしゃっていて(p59)、このエッセイはそのとおりのものになっています。
セカンドアルバム「エピソード」の章では、爆売れしているAKBの「フライングゲット」と勝負すると息巻き、「一部の人だけ聴いてくれればいい」なんてつまらないことは死んでも言わない。「どんな方法でもいいから売れたい」なんて恥ずかしいことは死んでも思わない。自分が面白いと思ったことを満足いくまで探りながら、できるだけたくさんの人に聴いてもらえるように努力する。それが全うな生きる道だとおっしゃるのです。かっこいい。
AV女優を批判する男をこき下ろしています。おまえも世話になっているものによくもそんなことが言えるなと。
そして、「多少乱暴な言い方だけど」と前置きしつつ、「私は人前で歌うことと人前でセックスすることは同じだと思っている。人前で表現するということは恥ずかしいことだ。そしてそれでお金をもらうということも」
なるほど、人前でセックスするぐらいの覚悟がないと表現者にはなれないということでしょうか。
厳しい世界なわけだ。
このエッセイは2011年から14年ごろに書かれたものらしいのですが、文庫化に際しての「あとがき」によると、星野さん自身はこれを読んで「誰だお前は」とつぶやいてしまったというのです。今の自分はもうあのころの自分ではないと。
そして、かつての自分に、あのころをもがき苦しんでくれてありがとうと結んでいます。