千葉県精神科医療センターは海のそばに建つ病院です。
ノンフィクションライターの野村進さんが2000年10月から2003年8月まで取材した記録が書かれています。
精神科で救急とはどういうことなのでしょうか。
冒頭語られる小熊さん(名前は変えてあります)という人の場合、会社から家に戻らず、途中の駅で駅員さんのマイクを取り上げ、第三次世界大戦が起きるとアナウンスをして暴れてしまったのだそうです。
小熊さんは大手電機メーカーに勤めるサラリーマンで、ニューヨーク支社で起きたトラブルの処理のために本社から派遣されたものの、入国の際にアクシデントに見舞われ、さらに支社でも厄介なトラブルの処理に当たり、帰国したときには精神的に参ってしまっていたのだそうです。
精神病棟にはいろいろな患者さんがいます。
その治療に当たる医師や看護師さんの並々ならぬ苦労もつづられます。
患者さんから暴力を振るわれて大けがをする
下の世話のために手の匂いが消えなくなり結婚指輪をしなくなる看護師さん
そして手を尽くしても自死を遂げる患者さん
つらい現実があぶり出されていくのですが、どこかのんびりしているのは、院長である計見一雄さんの存在でしょうか。
ふつうの人が何かの拍子に精神に異常をきたす。
ふつうと異常の境というものは何なんでしょうね。