ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力)とは、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」あるいは、「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」を意味するのだそうです。

 

詩人のキーツによって発見され、彼の死後170年後に精神科医ビオンによって再発見され、昨今、教育、医療、介護の現場で注目されている「負の能力」

 

脳はもともと分からない事態に耐えられなくて、すぐに答えを出したがったり、考えるのをやめてしまう傾向があるそうです。

 

このいい例が抽象画や音楽で、抽象画を見て分からないとあきらめてしまったり、性急にこれはこういう意味だと結論を下したがるのが人間の性

 

ネガティブ・ケイパビリティに対して、私たちが求めてしまうのはポジティブ・ケイパビリティ

 

この能力では、表面の問題だけを捉えて、もっと深いところにある問題にはたどり着けず、どうしていいか分からないような状況になると逃げ出すよりほかなくなる

 

こうした問題に対して、解決策のないまま耐える力こそ、現代人に必要だというのです。

 

そして、その力こそが、共感し人に寄り添う力になると

 

その例としてセラピー犬の「心」が紹介されます。

精神科医の筆者の診療所で実際にセラピー犬として働く柴犬「心」は、人間のように早急に判断して結論を下すのではなく、よく分かるのだそうです。泣いている患者さんには寄り添い、足の弱った患者さんを心配するのです。

 

人はどうしていいか分からない状況には耐えられないけれども、誰かが見ていてくれると何とか踏ん張れるそうです。

でも、それは家族じゃだめなんだって。だって家族もつらいから。

第三者が、何かしてあげようなんていうスケベ心を捨てて、寄り添えたらいいですね。

 

負の能力を培うのは「記憶もなく、理解もなく、欲望もない状態」

 

何かができる能力ではなく、何もせず寄り添うという能力「ネガティブ・ケイパビリティ」

 

白黒はっきりさせたがる思考からの脱出に助けになりそうです。