『世界屠畜紀行』は内澤旬子さんのルポルタージュ
内澤さんはモンゴルのテント(ゲル)で客をもてなすために羊の内臓を洗う女性たちを見て、いつも肉を食べているのに「肉になるまで」のことをまるで考えたことがなかったと思い立ち、世界中の屠畜現場を訪ね歩き、そこで目にしたことを詳細なイラストとともに紹介してくれます。
まず、このイラストがすごくかわいい。
韓国から東京、沖縄、アメリカ、インド
そして、革なめしという仕事についてつづり、動物の気持ちを考える
内澤さんはお肉になるところを見てお肉が食べられなくなったりしない人です。
私自身、この本を読むと、芝浦の屠場に行って新鮮なホルモンを食べたいと思ってしまいます。(実際に見たら無理でしょうね)
動物をお肉にするというのは、本当に職人の仕事なのです。
『聖書男』は信仰心のないユダヤ人のジェイコブズさんが、1年間聖書を字句どおりに当てはめて生活した自らの体験をつづった記録。
祈り、安息日を守り、借金を帳消しにし、エホバの証人を家に招く(何で?)
混紡の服を避け(レビ記19:19)、老人の前で起立し(レビ記19:32)、姦淫をしているという男性に小石を投げる(過激)
23日目に、「子どもをむち打ちなさい」という箴言13:24の聖句を実行するのですが、ジェイコブズさんは体罰は自分の教育方針に反すると考えていて、子どもをたたくのは子育てにおける水爆、武器庫に入れておいてもいいけれども、配備はすべきではないという主義。ラバー製のバットを手に入れ、遂に子ども(身長90センチ)のお尻をぺんぺんする。全く痛くない子どもは遊んでると思いキャッキャするのですが、息子に体罰を加えてしまったことを「ぼくの中で何かが崩れた。とても平静ではいられない」と後悔するのです。偉いよ、父ちゃん。
この本は聖書をまともに解釈してそのとおりに生活するということの滑稽さを気づかせてもくれます。