13歳で両親を亡くし、14歳で映画デビュー、戦中戦後の混乱期を経て、いよいよエンタテイメントに打って出ようと思ったときに結核を病む。ラジオやテレビのわき役でその魅力を放ち始めたときにはすでに30代を迎えていて、41歳にして『放浪記』で初めての主役を射止め~
そして、41歳から89歳まで48年間、上演2000回を超えるロングランとなる『放浪記』
本書は、森光子生誕百年の今年、かなわなかった百歳の放浪記を紙上で遂げるという趣向
まるで舞台を観ているように『放浪記』の魅力が語られます。
後年の『放浪記』のカーテンコールは、たった一人、終幕の座敷に座り、2階席、1階席の観客一人ひとりに手をかざし、まなざしを向け、感謝の気持ちを表すのだそうです。その間、3分から5分、水を打ったように静まり返る客席。そこから森さんが深々と頭を下げると、万雷の拍手。
「ブロードウエイでもウエストエンドでも見たことがない」と東山紀之が言うカーテンコール
さまざまな交友関係がつづられているのですが、書きとめておきたいと思ったのはユーミンとの対談
松任谷:とにかくずっと咲いている。これはすごいことです。
森 :まだ、春は終わっていない。夏になりかけなんだって自分に言い聞かせているの。
松任谷:私、つい最近まで、大きいライブをやっていまして、ハイになると同じだけのダウンが来るというのは頭で分かっているんですけど、実際にそうなるとつらくて。ベッドに頭を打ち付けながら……
森 :えー、ユーミンさんでもそんなことあるんですか。
松任谷:何かね、孤独感にさいなまれて……
森 :飽きないでください。それだけでいいです。
松任谷:ああ、ずっしり受け止めました。
名著です。