日経新聞の広告を見て読みたくなってしまった。

 

中野信子さんといえば『空気を読む脳』とか『毒親』とか面白そうなタイトルがありますが、それらはまだ未読です。

 

今回の本は中野さんの自伝なのです。

 

1975年生まれの45歳にして自伝。

 

 

はじめに、わたしは存在しないと。

わたしだと思っているものは、わたしではないと。

 

読者が中野信子だと思っているものは中野信子ではないということでしょうか。

 

確かに、人はそれぞれ自分の見たいように他者を見て、自分の聞きたいように他者の話を聞く。

いつでも誤解しているんですね。

本当の理解なんて無理無理。

 

 

自伝は現在から過去にさかのぼり

 

目次には、「バベル」、「命の水」、「パンと痛み」、「躓きの石」と並び

 

「終末思想の誘惑」と続きます。

 

 

世界が終わるという言葉には魔力があるのだそうです。

 

 

子どもの頃から人と違っていて、生きるのが大変だったみたいです。

 

随所に「ばかなんじゃないかと思う」という言葉が出てくるのですが、それが嫌な感じがしない。

 

頭が良過ぎて、自分が周りに理解されないという不思議さが、「ああ、周りの人はばかなんだ」という、諦めというか、許しというか、そういう感じで使われているのではないかと思いました。

 

小学生のときの通信簿に「利己的」と書かれたそうです。

それで、中野さんはお母さんにこっぴどく叱られたそうです。

中野さんのお母さんがまた子供っぽくて、中野さんと張り合ったりして、中野さんは随分大変だったんだろうな。

 

実は、私も通知表に利己的と書かれたことがあります。

私のお母さんは子どもの通知表を見るような人ではなかったので何事もありませんでしたが、中野さんみたいに賢くなかった私は、少し傷つきました。

 

中野さんは、人間は本来誰だって利己的なのに「学校の先生もばかなんだな」と思ったそうです。

 

 

全体に突き放したようなぶっきらぼうな文章なんですが、気持ちよく読めました。

優しさにあふれているというか。

 

 

脳科学者の中野さんは「生き延びることこそが、生物の基本」だと言います。

 

「身につけた知識だったり、生きている誰かその人自身が、直ちに何かの役に立たなくても別にいいのだ。生きているということそのものが遺伝的多様性を保持し、遺伝子プールを豊かにするという意味で、種の保存それ自体に大いに役立つこと」なのだそうです。

 

 

そして、「働かざる者食うべからず」という言葉が大嫌いなんだって。

 

 

 

 

なんだかうれしくなるなあ。