恩田陸・著『きのうの世界』を読みました。
今までも恩田さんの作品は何冊か読んでいるのですが、その中でも私のトップ3に入る面白さでした。
(因みに残りの二つを上げるとしたら、『黒と茶の幻想』と『ネクロポリス』ですね。)
恩田作品との出会いは、まだ学生時代の頃。
『店員のお勧め!』
ってコーナーが本屋にありまして(最近は多くの本屋で見かけますが、当時は画期的だった気がします)、そこに置かれていた『ドミノ』を手に取ったのが最初でした。
この『ドミノ』という作品は登場人物がやたらに多く、“それぞれは全然関係なく過ごしている人達なのに、ちょっとした行動が次第に繋がっていき、一つの事件が起こり、また、解決していく”と言う、正に“ドミノ倒し”の様な作品でした。
それぞれの視点で描かれ、映像がバンバン切り替わるような爽快感が特徴的な作品だったと思います。
それにしても…
本当に登場人物が多かったなぁ(笑)
必死に追いかけないと、
『あれ?あんた誰だったっけ?』
って、小説においてかれそうになる感覚を覚えています(笑)
さて、そこから始まった私の中の恩田ワールドですが、今回も楽しませて頂きました。
『きのうの世界』です。
内容は“水路と塔が特徴的なM町で起こる事件”の話。
そこで起こった殺人事件から始まる物語。
それは段々と、被害者の秘密に迫っていき、そしてM町の秘密にも繋がっていく…
この作品も、登場人物それぞれの視点で描かれるので、多くの魅力的な人達の考え方や、感じ方に触れられるのが面白かったですね。
一つの事件があれば、それぞれの見方が存在する。
例えば『彼女の知っている事を、彼は知らない』という事も、もちろんある訳で…
更に語り手が変わるだけでなく、時間も、ちょっと前や何年も前に戻ってたりするので、
『あぁ、コノヒトのココでのコレが、アノヒトのアレに繋がるのね!』
というのが、見事に面白い。
ある意味この小説、読者を色んな所に“引っ張り回して”くれます(笑)
しかし、“引っ張り回されている”と、いつの間にか、どっぷりM町に浸かっているのです。
そう、それぞれの登場人物は魅力的なのですが、やはり私は『M町』と言う“場所”に魅かれたように思います。
“M町で起こった事件を、様々な角度から捉え、その真相に迫る”
そんな小説でした。
気になった方は是非、M町の事件を目撃してみて下さい。
美しき
川底見える
透明の
流れ 私の
水路に通じる
