細い細い月を撮ろうと
車のルーフを支えに
スマホを構えた
目に見えた世界は色淡く
カメラ越しの世界は異次元に
深いあおに魅せられる
夕焼けを見送った後の明るさと
夜空との曖昧な境界線
その空に
その奥の宇宙に
吸い込まれるような
車のルーフが鏡面となって
裏返しの空を写す
心の静寂を…
波立つ心を鎮めよと…
そんな囁きが聞こえるような
木々や家のシルエットは
何も言わずそこに居て
その存在で私を温かく見守り
揺るがなさで諭してくれているような
写るひとつひとつの物影が
それぞれに語りかけてくれるような
景色を見ながら癒され
カメラ越しの世界を見つめて
お伽噺のような空間に
私は解き放たれた
