前回入院していた時
私は内視鏡によるステント交換の際
綠内菌という常在菌が見つかった。
健康な人に感染してもなんともないが
病室の周りにはで抗がん剤の投与で
免疫力が落ちている人が多い。
そういう人が感染すると
重篤な症状がでてくることもある。
医師や看護師などを通して
感染するとも限らない。
と言うことで私は個室に入り
入ってくる人みんなに感染防止対策を
施こされた。
いまはそれが解除になったが。
念のために。
話は戻して。
掃除の人もその例外ではなく
そんな病室専門に掃除する人がやってきた。
その人は女性できちんと隅々まで
掃除をされる人でした。
いつも来られるので
なんとなく話すようになった。
その方は歳は私より10歳ほど若かったが
妙にウマがあっていろんなことを
話し、語ってもくれた。
掃除の仕事は長く
高層ビルの窓拭きをやったこともあると言う。風の強い日はゴンドラが激しく揺れ
死ぬかと思った。
と当時の恐さを思い出すかのよう
に語ってくれた。
掃除と言ってもいろんなことをして
きたんだと感心した。
彼女とは電話番号とメールアドレスを
交換して、いまでも時々連絡を取っている。
いま入院している病院の掃除のシステムは
水回り、床の掃除、
土日祭日だけ水回りを掃除する人、
土日祭日だけ部屋のごみを収集にくる人など
それぞれに役割分担がなされている。
先日の土曜日、水回り担当の人がきた。
初めて見る顔だった。
私より年を重ねた感じの人に
見受けられたけど
背筋がピーンしていて姿勢がよかった。
洗面台を洗っていて
私はそれを見るともなく眺めていた。
そうすると、その人は突然話をし出した。
「奥さんね。私はこの仕事をする前は、
店をやってたんです」と。
やれやれ。
初めて会ったのに
人生期の半世紀を延々と
語られるのではないか
と思った。
まー、ともかく聞きましょうと
耳を傾けた。
オジサンは流暢に話し始めた。
「店は長いことやっていて
結構繁盛してたんです。
ところがカミさんが死んで
私も年だから店は閉じたんです。
家でぼーとしていても
しかたがないから
ここで働くことにしたんです。
働いていないと体が鈍る。
元気なうちは働かなくちゃ」
と威勢がいい。
きっと、この話はいたるところで
繰り広げているに違いない。
だが、私より年上の人が
一生懸命働いているのに
私は病気とはいえ
働きもせずベッドに寝ている。
時々、恥ずかしくなる。
そんなことを言うと
オジサンは
「何言ってるんですか。
いまは病気を治すことが仕事。
病は気からと言うし
病気に負けたらいけませんよ。
私は76歳だけど、まだまだ元気だし
母親は106歳まで生きて
最後は大往生しましたよ」と語って
励ましてくれた。
いろんな話を聞かせてくれるのは
掃除の人ばかりでない。
夜勤をこなしながら。
子育てをしている看護師さんもも多く
コロナ対策で休校になった時は
ご主人、親など周りの人の助けがないと
乗り切れるものではなかったと言う。
若い看護師さんに
「なんで看護師になったの?」と尋ねると
「母親が看護師だったから」
「小さい時から看護師になるものと
決めていた」
「病気をした時、看護師さんが
手厚く看護してくれて
将来看護師になろうと思った」
と動機はさまざまだが
看護師になることを早くから決めていて
しっかりしてるなあと思った。
看護師さんも悩み多き女性である。
私は個室にいたせいか
彼女たちから恋愛、結婚
時には離婚について
相談された。
私には、そういうことを
言いやすい雰囲気かあるのだろうか。
ただ年を重ねてきただけなのに。
でも相談されたからにはむげに扱えず
自分の経験や考えをフル回転させて
一緒に考えた。
看護師の下に看護助手という職種がある。
その名の通り、看護師を補佐し
補助する仕事である。
看護師の仕事も多岐に渡るが
彼女たちの仕事も雑多で忙しい。
患者を検査室や外来診察室まで
車椅子で届け、迎えに行ったり
体の動けない人のために
顔を拭くためのおしぼり
歯磨きの用意もしなくてはならない。
その他、看護師の指示のもと
シーツ交換を手伝ったりして
私の知らないところでも
いろんな仕事をしている。
私のように、たくさん歩けない患者には
部屋までお茶を配ってくれる。
看護助手のひとりに
いつも楽しそうにしている人がいる。
「いつも楽しそうにしているけど
何がそんなに楽しいの?」と
意地悪オバサンは聞いてみた。
すると
「いま看護師を目指して、
看護学校に行っているんです。
周りは十代の人ばかりで
それが楽しくてしょうがないんです」
と、目を輝かす。
見たところ、そう若くない。
40代はじめといったところか。
「結婚をしているの?」と聞くと
「しています」
「旦那さんはそれを認めているの?」
「はい。理解してくれています。
子供がいないこともあるけど
甘えさせてもらっています。
私、ここの他に土日に
救急病院でも働いているんですよ。
学費くらいは自分で稼がなくちゃ」
と、イキイキ話す。
「体を壊さないでね」
とエールを送ったが
凄いなあ‼️と驚くばかりである。
このように病院には多種多様な職種があり
まだ私の知らないところでも
たくさんの人々が働いている。
私はそんな人たちのおかげて
安心して入院生活が送られている。
彼らの支えとパワーをもらって生きている。
と実感する。
一生懸命生きないとバチがあたりますね。