レベル2の審査を終え
私はすぐに、ボディになってくれるモデルを募った。
これまで、延べ30の人にモデルになってもらっているので、その方々に、再びモデルになってもらうことができた。
しかし、私としては、さらに練習をしたかったので、新たな人を探した。
幸い、私は仕事などで、人脈を広げてきたので
思ったより容易にモデルを見つけることができた。
この時は、延べ50人の人から、練習をさせてもらったように思う。
そして、私は、その頃から、プロになることを意識していた。
ライター業をすっぱり捨て、この道に賭けようとも思った。
私は、猫ましっぐら。
思い込みの強い人間である。
加えて、ひとつのことしかできない
不器用な人間である。
また決めたら、瞬時に走り出し、突っ走る。
たくさんのモデルを相手にするようになって
それぞれに、体のリズムがあることを発見した。
トレガーアプローチの基本手技は
なでる、伸ばす、揺らすの
ソフトなワークに加え
モデルの重さを感じることである。
前にも言ったかもしれないけれど
モデルの部位の重さを感じるには
手技する方は、手の力を抜いて
相手の部位の状態を
きちんと把握しなくてはならない。
これが結構難しい。
なぜなら、手の力を抜くのは
まず自分をリラックスさせて
自分を0(ニュートラル)にする
必要があるからだ。
この0のリラックスが自分を試させられるのだ。
瞑想状態を作ることに似ているのかもしれない。
練習室は、玄関先にある和室に当てた。
南向きの和室は2方から陽が射し込み
障子を通した光が柔らかい。
モデルをお願いする人には
まずエッセンシャルオイルを入れた足湯に
浸かってもらう。
その時に、よもやま話など
少し雑談をさせてもらって
私なりに少しでもリラックスして
ほしいと思うからだ。
テーブルに乗ってもらい
私は、モデルから少し離れ
目を閉じ、頭を空っぽにし
意識を丹田に集める。
そしておもむろに首を伸ばし、
頭を揺らし、体のアウトラインをなぞる。
トレガー(以降トレガーアプローチをトレガーと略する)では、それを彫刻するとも言う。
その後、うつ伏せになってもらい
背中のワークを行う。
話は前後するが、ワークを行う前に
必ず、相手にいまの体の状態を聞く。
そして、一緒に、手足を動かしたり
歩いたりして、動きの確認も行う。
ワークが終わると、
しばらくそのままの状態でいてもらい
静かにゆっくりテーブルから降りてもらう。
テーブルから降りたモデルに
いまの感じを伝えてもらう。
ワークをする前と行った後の違いなども聞く。
その後、モデル自身に、
体の部位と対話するようにイメージしてもらい
体を感じる作業をしてもらう。
トレガーでは、それをメンタステックスといい
自分自身で、セルフケアを行うことも指導する。
これで、ワークが終了。
その後に、ハーブティを出し、
本日のワーク体験をアンケート用紙に
書いてもらう。
ついでに、次のワークの予約を入れてもらう。
これが、私の練習の流儀だった。
練習はとても楽しかった。
トレガーは、ワークを行うことで
相手を気持ちよくさせることもさることながら
行う方も気持ちよい。
それが、トレガーの大きな特徴かもしれない。
トレガーは、やってあげる、してもらうという
関係性ではない。
基本的には、双方の関係は対等で
体と体の対話。
お互いの状態を確かめながら進める
ライヴジャズセッションのようなもので
実際、ワークはセッションと呼ばれている。
モデルと行う方の体のリズムがピッタリ合うと
ふたつの体がひとつになったように感じ
共鳴感を覚え、至福な気持ちになる。
たぶん、こんな感じは他のボディワークでは
味わえないのではないかと思う。
やがてモデルになってくれた人の口コミで
プロのボディワーカーの人まで
練習モデルとして訪れるようになった。
次回につづく。