伊勢志摩を最後の旅とし、
名古屋から飛騨線で富山に帰ることにしていた。
名古屋駅からの出発までには、
時間があったので、タクシーに乗り込み、
運転手の案内で名古屋見物をすることにした。見物と言っても、
車中からの見るにすぎないものだったけど。
車が走っていて、広さ、碁盤の目のように整備されている道路に感心されられた。

再び名古屋駅に戻った。
それでも時間がまだあった。
私たちは駅の構内を観察しようということになり、食堂街など見ながら、ぶらり歩いていた。
すると、制服を着た鉄道公安員に呼び止められた。
「どこから来たんだ。何をしているんだ」と
詰問された。
これまで旅をしていて、富山に帰るんだけど
列車の時間まで間があるので、
その辺を散策いていると言うのだが信じてもらえない。
どうも家出娘と思われたらしい。
私たちってそんなに田舎者にみえるのかしらと思い、憤慨して抵抗したが信じてもらえず
とうとう公安室まで連れていかれ
列車が来るまで、ここで待っていなさいと
言われた。
そこで頭をよぎったのが、もしや学校に通告されるのではという懸念。
指導部のお局ババアに通告されて、
私服でいったのがばれるのではないか❗と。
おとなしいY 子とK子は、不安で落ち着かない。
J子と私は、公安官に信じてもらえなかったこと、田舎者と思われたことが腹ただしく
抵抗を繰り返していた。
やがて、発車時刻も近づいてきたので
公安室を後にした。
公安員の人は「気をつけて帰るんだよ」と
優しい目をして送ってくれた。

列車は岐阜を過ぎて、しばらくしたら
周りには雪が積もっていた。
心なしか、寒さが柔らかかった。

未明に家路に着いて、少し眠って
学校に向かった。
今日は、私たち卒業生を送る謝恩会の日である。
会場が設けられた講堂には、
クラスメートが一同に集まり、異口同音に
今回の卒業旅行について感想を聞かれた。
どうも、他にも旅行に行ったグループが
旅行に行ったらしい。
その際には、指導部のお局様には
「気をつけて、行ってらっしゃい」としか言われなかったみたいだ。
私たちとのこの差は何なんだ❗
まー、私服で行ったことはばれなかったようだし、高校生活の最後を飾るには
いい思い出になったことは確かだ。

のちに、たびたび四人で会ったが
出てくるのはその時の卒業旅行の話ばかり。
他に話すことがないのかと思うほど
繰り返す私たち。
今では、会うこともなくなったが
私の大切な思い出。
思い出の引き出しをたまに引いて見るのも
いいものだと、しみじみ思う今日この頃です。