町外れに家を持つ私たち家族。
父は、時折、愛車のホンダのカブに股がり
街に繰り出していた。
当然のごとく、私は後ろに相乗りして
一緒に出掛けます。
父は、国道(現:県道)をまっしぐら走り
途中、バイクを降り、
スモークがかかった扉の中に消えていった。
確かガラスには、「雀」という文字が書かれていたような気がする。
私は、バイクと一緒に外に取り残されたままだった。
すると、部屋の中から、知らないおじちゃんが出てきて、お菓子をくれた。
しばらくして、父が部屋から出てきて
再び、街中へと風を切って走る。
その間、私は黙々とバイクの後ろで父にしがみつくだけだった。
やがて、街の中心部に着き
また父は私をバイクで待たせ
じゃらじゃらと音がする店の中に入っていった。
その時の私は、ひとりにされた不安と退屈で
半ば泣きべそ状態でだった。
父は好きだけど、
その時の父はあまり好きではなかった。
父は、ごめんとばかり、
店の向かえにあるラーメン屋に
連れて行ってくれた。
ほどよくして、スープが、真っ黒なラーメンが
出てきた。
その色にも驚いたが、おじさんの店員が
どんぶりの内まで指を突っ込み
出した仕草には閉口した。
味は、色と同様、結構濃く辛かった。
子供には少々刺激的な味だったのかもしれない。
後で思えば、私は父の趣味である
麻雀とパチンコに付き合わされ
その埋め合わせにラーメンを
食べただけである。
ラーメンは、現在富山名物となっている
元祖ブラックラーメンである。
当時のラーメンは今のものより
もっと味はエグかったような
気がする。
子供の味覚だった
せいもあるかもしれないけれど。
総体的には、
子煩悩で、品行方正で律儀な父。
ただ一面、
ヤンチャなわがままな男性であったのも
確かなようである。(>_<)