父の思い出。2話。私は、父がむいてくれるりんごを食べるのが好きだった。父はとても器用な人で、薄く皮をむき途中で切れることなくすいすいとむいた。それをホイと言って、私に差し出してくれた。美味しそうに食べる私の顔をみて父は、目を細めた。不器用な私は、厚く皮をむき、皮は何度も途切れる。りんごの皮をむくたびに、私は誰に似たのかなあと思う。父ではないことは確かなようだ。