私の母は、とても大雑把な人でした。
部屋は丸く掃き
料理のだしは、だしの素を使い
洗濯したものに、アイロンを当てるなどしたことがありません。

そんな母ですから
美味しい料理など期待できません。
微妙な火加減が必要な
茶碗蒸しや煮豆など
それは見事です。
茶碗蒸しは、火が強すぎてスがたち
煮豆は皮はしわしわ。それでいて
ちゃんと火が通ってなく、固いのです。

ですが、唯一、母が作ってくれた
太巻寿司といなり寿司は、美味しかった。
具はかんぴょう、甘辛く煮たしいたけ、卵焼き、ピンク色のでんぶ。
巻きすで巻いている横で見ていて
つい端っこをつまみ食いをして怒られた。
遠足の日も、手間がかかるのに
太巻といなり寿司を弁当にしてくれた。

母が作る赤飯も好きだった。
あいかわらず、小豆は割れて決して形のいいものではなかったけど
釜戸の火で羽釜で蒸した餅米の味は格別だった。
母は、喜んで食べてくれることに気をよくして
ことあるごとに作り
私が家庭を持っても、父がそれを持ってきてくれた。

母がいなくなって、もう母の赤飯を食べることはできないが、赤飯を食べる度に
母の赤飯を思い出す。
やはり母の赤飯にはかなわない‼
「母さん!もう一度、母さんの赤飯、食べたいよ‼」