04. エルモ

 

気だるい歌声が今の時代っぽくもあり、

90年代後半から2000年代前半の

J-POPのテイストもにじむようで、

なんとも懐かしい色合いの曲です。

 

わかりやすいメロディーに

シンプルなロックサウンドが加わって、

その中で綴られる詞は

純文学のような聴き応え、

もはや読み応えといってもいいほど。

 

今作『WONDER HACK』は

自身に問いかけるような

内向的なものが多い印象ですが、

その中でも特にこの『エルモ』は

内に内に迫っていくものを感じます。

 

あらゆることに関して

多くを語らない

末吉秀太らしい歌詞。

 

面白いのが、

ブロックごとに視点が変わるところ。

あくまで一人称は“僕”でありながら、

自分自身として感情を

吐露するパートがあったかと思えば、

第三者的に疑問を問いかけていく。

 

視点があちこちに移動させることで

文学性を高めつつも、

かえってリアルな心情を浮き彫りにする。

自問自答している時って

まさにこういう感じだなと思わせます。

 

2番終わりで

起こった事象を受け止めようとしながら、

大サビに入る前の“?”

冒頭にはなかった“?”が

微かな希望にすがっているような

人の弱さ、情けなさを想起させます。

もしかしたらまだ届くんじゃないか。

 

というのは、

あくまで個人的な解釈ですが、

聴きながら情景を、感情を

想像させる楽曲は面白い。

 

あと、この曲で感じることは、韻の妙。

 

秀太くんが書く詞のほとんどに

当てはまることですが、

中でも特にこの曲の詞は

1番と2番に通じる部分が多くて。

語尾の子音が同じだったり、

唐突に同じ言葉を用いてきたり、

言葉遊び的な要素がまた文学的。

 

1番と2番で

“世界から”というフレーズが

まったく違う使われ方を

しているところが好きです。

 

それにしても、

タイトルと物語のギャップがいい。

間奏のポップさが

物語の残酷さを強調してていい。