朝日。黒煙。
白い光の中に見える黒い線がいくつも立ち昇る。
「…すごいな。やっぱ」
思わず、感嘆のため息をついてしまった。
そこには、世の中を犯す薬を作っていた場所。
製造跡地ともいえないほどに崩壊した建物の瓦礫の上に
一人の少年が立っていた。
赤い目が太陽をまぶしそうに細めていた。
纏っている衣服はボロボロになっていた。
大方、乱闘でもしたのかと思える様子だった。
「おい!トム!これでいいのか!」
少年が木立を分けてこちらにやって来る男に向かって叫んだ。
先ほど、ため息をついた男だ。
「うん…いいけど…」
そう言うと、辺りを見回して苦笑した。
「やりすぎかな?〝飛龍〟くん」
彼の裏での呼び名で呼んだ。
その名が嫌いなリュウは思いきりいやな顔をして、
いままで居た瓦礫の上を飛び移りながらトムの前に来た。
「…その名で呼ぶな!!」
12才とは思えないほどの殺気を出しながら睨んだ。
(おお…怖い。恐い)
笑って誤魔化して、話を変える。
「そっそういえば。中の人たちは?」
とりあえず、視線をはずそうとキョロキョロ辺りを見回した。
一応、トムは16で年上なのだが、力では、向こうのほうが上なので、
口出しは出来ない。
「そいつらなら、向こうだ」
瓦礫の向こうへと歩き出したリュウの後をトムが安堵の表情で続く。
もう、日は昇っているが瓦礫の向こう側は影っていた。
そこに、人が山積みになっていた。
「とりあえず、幹部連中(?)は潰しといた。
それから、無理やり手伝わされたような奴らには、記憶消しておいた。
…ああ、そういえば。なんか、何人か、逃げていた気がするな」
人の山を見下ろして告げた。
その声には、何の感情もこもっていない。
「ふうん、そっか。んじゃあ、とりあえず。任務完了ってことで」
興味がなさげな顔で言った。
それから、二人で先ほどまで潜んでいた木立に向かって歩いていった。
だが、その途中。リュウが突然、立ち止まり、人の山に目を向ける。
「………」
そのまま、ジッと見つめる。
「~~、~~~」
ボソリとつぶやいた。
「どうかしたか?」
立ち止まったリュウを不審に思い、トムまで立ち止まる。
その問いかけに対し、
「なんでもねえ…」
と言ったきり、走って荷物が置いてある木にかけていった。
「あ、そうだ!」
荷物を担いで、帰還しようとしていたとき、トムが叫んだ。
「?」
「…あー。すっかり、忘れてた」
とても、気まずそうな顔でリュウのことを見る。
「ごめん。もうひとつ任務あったんだ」
頭下げて、派手に音を立てて手をあわせた。
「で、なんだよ。モノによってはまだゆるせ…」
「ホント!ついでだと思って軽~い気持ちで申請したんだ」
嫌そうに聞こうとしたリュウを無視して続けた。
腹が立って、浮き筋立っている。
「人探しなんだケド!あんまり手がかり無くて…。
この森に居ることだけわかっているんだ」
らくそうだなーとか思っていたから。
とか、言い訳をするトムに怒りがさらに上がってしまっていたが、
頭はまだ、冷静だった。
(この森だと…?)
この森は国のなかでも、よく知られている森で
広くてありのままの自然が分かると言っても良い。
↑つまり、リュウが言いたいのはココ。
地図が無ければ、迷って死ぬのが大低のオチ。
そんな、広大な森から、人を探すなんて
(___不可能に近い…)
「その人は襲撃を受けた集落の生き残りらしいんだけど。
俺らとは別の奴らが襲撃してきた奴らの収拾をつけに行ったんだけど…」
そこで、一旦言葉を切ると首を振った。
「わずかに息のある人から、一人だけ逃げ延びて森に逃げ込めたって聞いて、
その襲撃を詳しく聞こうってワケ」
仕方ないから、探そうと足を踏み出したトムに
怒りを込めて
「…で。ソイツの特徴は?」
そう聞かれたトムはちょっと得意気に言った。
「薄青の髪と目。女の子だって。直に言うとエメリスク人の末裔。
…王族のお姫様って所かな。」
これは偶然なのだろうか。
『お兄ちゃん!二人で、会いにいこう!』
この俺があの日から、し続けてきたコトに対する。
神様からの罰なのか。
(ゴメン…。兄ちゃん、あの時の約束より先に会ってくるな)
心の中で渦巻いていた、罪悪感の中にまたひとつ。
悲しみのしずくが零れた。