精神科には電気痙攣療法という治療法があり、ECTと呼びます。

正確には最近行われているものは修正型電気痙攣療法、m-ECTと言います。



簡単に言うと全身麻酔下で、両側のこめかみのあたりに電極を貼り、電流を流すことで、人為的に痙攣を起こして治療するというものです。

ただ、修正型、というように、現在の治療では筋弛緩剤を使用するため全身の筋肉の痙攣は起こらないようになっており、

昔のイメージによくある、全身を震わせて、みたいな暴力的なことはありません。



とはいえ、未だに、どうして効くのかはわかっていませんし、そう説明されたご家族が不安に思うのも当然だと考えています。




緊急性のあるうつ病(自殺企図や自傷のリスクが高い、拒食拒薬など命に影響を及ぼす状況など)、難治性の統合失調症や緊張病と呼ばれる病態など、

要するに緊急性の高く内服薬の効果を待っていられないという場合、難治性で内服薬が効きづらい場合に実施されていました。


あとは本人の治療希望がとてもつよい場合にも行っていました。



私の働いていた病院では、手術室で実施しており、安全を確保した上で行われていました。


だいたいが一週間に3回、隔日実施し、それを4週間、トータル12回を標準としていましたが、効果の出方は人それぞれでしたので、12回に増減はありました。


早い方で数回から症状の変化があり、遅くとも7,8回で症状に変化が出ていました。



少なくとも、医師の方から実施した方がいいと判断された症例においてはほぼ症状の改善が見られていたように思います。




ここだけの話、医療者からECT以外の治療法勧められたにも関わらず、希望されてECTを実施された症例に関しては効いたな、と他覚的に感じるほどの症状の変化は見られない人が多かったような気がします。


なんなら、実施する前から効かない気がする…という方もいました。


とはいえ、全く効かないといいきれる根拠も何もないわけですから、患者さんの強い希望がある場合には実施されることが多かったです。

多少効いてる方もいました。

(元々が緊急性のあるほど悪くないことが多いので、効果がわかりにくいということ、そのため劇的とまでは絶対に行かないという点も影響してると思います)



この治療法は、前述の通り全身麻酔下で行いますので、もちろん麻酔科の医師が必要です。

そういうわけで、全ての病院で行えるわけではなく、行える病院は、治療のうりの一つでもあります。

他院の患者さんがECTのためだけに当院にやってくるということも多くありました。



もちろん、侵襲を伴いますので、ある程度の身体疾患の検査を行います。

そこで、治療に耐えれそうと判断される人にだけ実施します。

総合病院でしたので、身体科の医師にも判断を仰いでいました。



症状のない脳梗塞が発見されることがたまにあり、治療が延期になることもありました。

(緊急性のある患者さんの場合、水分摂取がままならないことが多いことも関係あると思います)



この治療はその後内服薬での治療継続は必要なので、ECTだけで完治する、というものではありません。




初めて聞く方や提案された方はちょっとびっくりされるかもしれませんが、

精神科治療の中でも、必要だと感じる治療の一つです。

治療機会を家族の感情によって無くすとしたらもったいないと思う治療の一つです。

繰り返しますが、なぜ効くのかはわかってないません。

でもなぜだか効くのです。

私ももし、家族が提案されたらお願いすると思います。







とはいえ、全くデメリットも副作用もないわけではありません。


その点は次回に書こうと思います。