私は、総合病院の精神科病棟で看護師として働いていました。
精神疾患の治療をされる方はもちろん多く入院されていましたが、
総合病院における精神科の役割としてある
・身体疾患の治療をしたいけれど身体科では管理が難しい精神疾患の患者さん
・精神科病院では管理が難しい身体疾患合併の精神疾患の患者さん
を受け入れることが多くありました。
なのでオペの患者さんも入院されていましたし、抗がん剤や放射線治療をする患者さんもいました。
透析患者さんや妊婦さんもいました。
中には精神症状も強くでており、精神科病棟でなければ難しい方もいましたが、精神科病棟でなければならないとは到底思えない落ち着いた患者さんも多くおり、精神疾患の患者さんの管理は難しいといった固定観念や偏見を多くの医療者が持っていることを感じていました。
そんな中で、精神疾患の患者さんが身体の治療を受ける際に生じる不利益を多く感じていました。
もちろん、精神症状が強く出ており、正常な判断ができずによりよい治療が選べないことがあることや、精神症状が強すぎてそもそも精神治療を行わないと身体の治療を行えない人も多く、そのような方々が結果的に受ける不利益も無視は出来ないところではあります。
しかし、精神疾患を持っている患者さんの管理は困難だ、出来ないと医療者が嫌厭することにより、精神科病棟で身体の治療を受けることになった患者さんの不利益はもっと無視できないのです。
例えば、精神科スタッフは、精神症状を見ることには長けていますが、毎回違う身体疾患や治療方法の患者さんを広く受け入れる必要を迫られるため、自ずと慣れていない身体疾患や治療を担当することが多くあります。
もちろん慎重に行いますが、専門の病棟のスタッフと同じ感度で異常に気づけるわけはありません。
同じスピードで行えるわけもないので、もしかしたら患者さんに与える苦痛も増えることがあるかもしれません。
内科の医師がいつも近くにいるわけではないので、気軽に気になることを相談できる環境にもないですし、すぐに見に来てもらえるかというと、専門病棟よりは劣るに決まっています。
この時点でも、不利益に気付いていただけると思いますが、それだけではありません。
そういった患者さんが転院が必要になったとします。
身体疾患のある精神科病棟で診ている患者さんは
精神科病院からは身体疾患の管理ができないからと断られ
内科の病院にはうちには精神科がなく、精神疾患の管理ができないからと断られるのです。
それでも自宅退院は難しく転院が必要な患者さんの多くが、身体疾患治療の継続を諦めて精神科病院へ転院していくことになるのです。
少しでも多くの身体疾患治療に携わる医療者の方に患者さんの不利益に気付いていただけ、専門病棟での治療を受けることが出来る患者さんが増えることを祈ります。