双極性障害の患者さんは、実は、うつ病として治療を始められる方が多くいらっしゃいます。

前回の記事にも記載しましたが、明らかな躁状態ではない場所、いわゆる軽躁と呼ばれる状態の場合、
少しテンションが高いだけなのかな?
元気になってよかった。
と、本人も家族も考えるため、病院にはいきません。

うつ状態になったあとに病院に受診したとしても、病気の症状だと考えていないため、そういった軽躁エピソードについては話されない患者さんが多いのです。

話の流れでそういった話が出ることもあるとは思いますが、患者さんが症状だと思っていない場合、表出されるのはかなり難易度が高くなります。
それが入院などで医療者と話をする機会が多ければ誰かしらとの話で引っ掛かることもあるでしょうが、時間が限られた外来受診の場では尚更です。

しかし、うつ病と双極性障害では基本的に使用される薬剤が異なります。

簡単に言うと
うつ病では抗うつ薬と言って気分を上げていくお手伝いをするお薬が使われます。

双極性障害では気分安定薬といって、気分の波を抑える薬が使われます。

つまり、一般論で言うと、双極性障害の患者さんが抗うつ薬で治療をされるとどうなるか、ということです。

(もちろん、医師の判断の元、この限りではないこともあります)


治療の過程で、躁状態を呈した場合には速やかに治療方針が変更になりますが、これも軽躁エピソードだと難しい場合があります。

なぜなら、医療者はうつ状態の患者さんしか知らないことが多いので、病前性格を知りません。

もともと明るい人だったのか、もともと引きこもり傾向の性格だったのかで、軽躁状態と言える状態は全く変わります。

学生さんによくお話していたのは、クラスで休憩時間も隅っこで静かにしている子が、ある日突然、クラスの中心人物のようなテンションで登校してきたらおかしいけれど、中心人物のような人はそれがいつものテンションですよねということです。

ですので、外来受診の短い時間で軽躁状態を確信することは難しいことだと思います。

ここで重要になるのはやはり家族です。
家族に対して気になるテンションの高さや、元気になってる様子がある場合にも医療者へ相談してもらえるよう指導しておくことも大事です。

それがたとえ軽躁状態ではなくとも、意図的に自分を元気に見せようとするうつ病の方もいらっしゃるので(そういう無理は大概、症状を悪化させます)、そういう方も拾うきっかけにもなるのです。