精神科では、切っても切り離せない問題だと思います。
日本のなかで、自殺が多い場所は刑務所と精神科病院だとされています。
当然のことです。
ハイリスクな人が多いのですから。
精神科でなくても病院では病状悪化により自殺する患者さんも多く、ある調査では、20%弱の病院で過去3年間に自殺を経験したことがある、と答えられています。

実際に行動に移したことを自殺企図
死にたいと思う気持ちを希死念慮といいます。


精神科で自殺企図をする患者さんはうつ病の気分の落ち込み、希死念慮からだけではなく、統合失調症の幻聴に命令されて行動化してしまうなど様々です。


私達は入院の際に 
「死にたい気持ちはありますか」
「自分を傷つけてしまいたい気持ちはありますか」
と確認します。

イエス、と言われた場合には
「入院中は行動に移さない約束ができますか」と確認します。 

ここで、切迫性の確認をします。

取り繕いでもいいのです。
約束が出来る、と応えた方にはまだ現実検討識があります。

切迫している方は、この約束が出来ない方も多々いらっしゃいます。

他には具体的な方法を考えたことがあるか、の問いも有効です。

漠然と死にたい人に比べ、死ねる方法を探している人は注意が必要です。

確実に死ねる方法を探している可能性が高いです。

病院に入院させれば大丈夫、と思っているご家族がいます。

そうではないのです。
リスクが減る、という話なのです。
リスクを最小限にするため、モニターを設置しても、定期的に病室を巡回しても、可能性をゼロにすることはできません。

自宅にいるよりは危険物ははるかに減少し、タイミングも減るのは事実です。
スタッフも気を配りますが、四六時中見守ることは不可能です。
ですが、これは自宅でご家族も出来ることではありません。

私も残念ながら、自殺企図した患者さんにそれなりに出会ってきました。
未遂に終わった方もいれば、完遂された方もいます。

いつも思うのです。
どうすればもっとよかったのか、と。

ただ、ここは倫理との戦いでもあるのです。


極論を言います。
語弊や批判を恐れずに言います。
自殺を防ぐ、という点だけでいうのならば

可能性を限りなくゼロにするためには全裸で何もない部屋に閉じ込めておくほかにないのです。

でも、これはあまりに非人道的ですね。

死ぬ方法、と言われると何を想像しますか?

服を着た人がドアノブもしくは何かを引っ掻けることが出来る場所さえあれば死ねるのです。

引っ掻ける場所の高さは問いません。
座ってでも自分の体重を掛けることができれば可能です。

私はブラジャーで首を絞めようとしていた患者さんにも出会ったことがあります。

洗面所の水道に水を張り、溺死しようとした方もいました。

防ごうと必死に頑張っていても、全てにはならない。

自殺ケースに出会う度に医療者の無力さに打ちのめされるばかりです。