【ウランバートル=出水翔太朗、ハーグ=酒井圭吾】ロシアのプーチン大統領は3日、訪問先のモンゴルでオフナー・フレルスフ大統領と会談した。国際刑事裁判所(ICC)加盟国であるモンゴルは、ICCから逮捕状が出ているプーチン氏を拘束する義務を履行しなかった。罰則は事実上なく、国際秩序をないがしろにするあしき前例となる懸念がある。

 タス通信によると、両首脳はロシアの石油製品や航空燃料のモンゴルへの供給などに関する五つの文書に署名した。会談でプーチン氏は「ロシアはモンゴルの主要な経済パートナーの一つだ」と述べ、ロシアとの関係強化がモンゴルの経済発展に寄与することを強調した。フレルスフ氏も、プーチン氏のモンゴル訪問が「両国関係を豊かにするために重要だ」と語った。

 ICCは昨年3月、ウクライナ侵略に関連する戦争犯罪の疑いでプーチン氏に逮捕状を出した。モンゴルはICCに判事を出すなど協力的な姿勢を示してきたが、今回は「実利を選んだ」(モンゴルの外交筋)格好だ。モンゴルは石油製品の9割超をロシアに依存するほか、不足電力をロシアから購入している。

 プーチン氏は「拘束リスク」を回避するため、昨年8月に南アフリカで開催された新興国グループ「BRICS」の首脳会議の対面での出席を見送った。モンゴル訪問の前例ができたことで、今後はICC加盟国であっても、プーチン氏の訪問を受け入れようとする国が出てくる可能性がある。

 ICCは加盟国が義務を履行しない場合、「加盟国会議」で説明を求めたり、批判する書簡や声明を公表したりすることができる。国連安全保障理事会に問題提起することもある。ただ、罰則や制裁の規定はない。